高齢者モビリティの選択要因と支援方策に関する研究
62/106

60 まとめ 本章では、自動車を利用している高齢者(公共交通を利用していない高齢者)が、公共交通を利用しやすくするための環境づくり・サポートが重要になるとの考えのもと、運転技術講習会での情報提供、出前教室、最寄バス停簡易検索システムの検討など、他主体が連携して実施していく必要がある方策について試行を行った。 表3-2は、顧客の購買心理プロセスを説明するAISCEAS(アイシーズ)モデルのプロセスに併せて、公共交通利用と既存情報提供サービスを整理したものである。現在、地方自治体や交通事業者が展開している情報提供サービスは、AISCEAS(アイシーズ)モデルにあてはめると「検索」「比較」「検討」「行動」の領域を担い、「注目」「関心」がカバーされていないことがわかる。 本研究での取組みは、この「注目」「関心」をサポートするために検討した方策であり、これまで公共交通を利用したことがない高齢者へ、公共交通利用を促進していくためには「注目」「関心」といった領域からきめ細かくサポートしていくべきである。 さらに、インターネット環境に慣れていない高齢者を対象として「注目」「関心」を高めるためには、紙面での情報提供・面着によるサポートが必要になる。そのためには、高齢者のモビリティに関連する様々な主体が連携して、最適なモビリティの情報やサービスを提供していかなければならない。今回の試行では、情報提供を依頼した自動車学校からは一定の理解は得られたものの、先頭だってマネジメントすべき行政側の連携に課題がみられた。今後は、交通安全・公共交通・福祉・地域振興・商業・観光が連携し、高齢者のモビリティ環境を整えられることに期待したい。 表3-2 AISCEASモデルと公共交通利用のプロセス AISCEAS(アイシーズ)購買モデル 公共交通利用プロセス 既存情報提供サービス 注目 Attention 商品に注目し、 公共交通に着目(注目)し、 本研究が着眼した領域 • 運転講習会での情報提供 • 出前教室 • 最寄りバス停検索システム 関心 Interest 認知度を高めて関心をもつ、 利用できる手段を認知し、公共交通に関心をもつ、 検索 Search 具体的な情報を調べ 具体的な行先、時刻表を調べ、 バスマップ バスガイドブック 比較 Comparison 類似の商品を比較し、 複数の公共交通が利用できる環境であれば比較をし、 みちナビとよた、 乗換案内等の検索サイト 検討 Examination どれを購入するか検討する。 利用する公共交通を検討する。 行動 Action 実際に行動する。 実際に公共交通を利用する。 路線別ポケット時刻表 共有 Share 経験を広める・共有する。 利用経験の口コミ、家族や友人と一緒に乗車する。

元のページ  ../index.html#62

このブックを見る