高齢者モビリティの選択要因と支援方策に関する研究
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1 1.はじめに 研究の背景・目的 わが国では、高齢者が関与した交通事故の割合が年々増加している。その要因として、安全不確認や交差点安全進行、前方不注意など判断ミス・操作ミスによる違反割合が高まっており、重大事故につながるケースも多い。近年では、免許返納者への特典や移動サービスを行政及び民間企業などが連携して展開し、免許を返納しやすい環境づくりが進みつつあるが、社会に定着しているとは言い難い状況である。この様な状況となっている背景として、本研究では以下の3つを問題提起とした。 ‣ 免許更新時の診断結果が、運転能力の確認材料として有効に活用されていない。 ‣ 自動車を利用してきた高齢者は日常生活の中で公共交通等を利用したことがない。 → そのため免許を手放す不安感が強く、免許を是が非でも更新したいという心理が働いている。 ‣ 高齢ドライバーの運転継続に関する判断は公安委員会や自動車教習所(専門医診断を受ける場合は医師)に委ねられ、社会全体で高齢者のモビリティを支える(考える)仕組みが整っていない。 →産・学・官・民の連携不足。ならびに土木計画学や交通心理学などの学問領域、交通安全や公共交通などの研究領域の連携不足。 そこで本研究では、自身の身体能力や運転能力を知る機会である免許更新(高齢者講習)時をターゲットに、免許更新時の診断結果を活用した高齢ドライバーの運転特性を分析する。また、安全・快適な高齢者モビリティ社会の実現に向け、行政・公安・自動車学校・交通事業者を巻き込んだ連携方策について、社会への実装を目指した検討を行う。 図 1-1 本研究の位置づけ 高齢者講習講習予備検査+高齢者講習65歳・・・・70歳・・・・75歳・・・・80歳・・・・85歳~これまでの成果:高齢ドライバー活動量が多い、QOLが高い手段選択の機会手段選択の機会今後の課題:事故、免許返納、運転しやすい環境…

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