高齢運転者の法令違反特性及び防止対策に関する考察
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27 4-3.事故類型と違反類型の関連性への分析 4-3-1.アソシエーション分析の紹介 「アソシエーション分析」はスーパーマーケットのバスケット(商品を入れるかご)に入れられる商品の「あわせ買い」を分析するという意味で、「バスケット分析」とも呼ばれ、目的は「AならばBである(A⇒B)」というルールを導き出すことである。有名な例としては、アメリカのスーパーマーケットで「アソシエーション分析」を適用したところ、「ビールと紙おむつ」が頻繁に合わせ買いされるパターンを導き出したことにより、「ビールと紙おむつ」を近く並べてみると、売り上げが上がったという事例がある。ここで、「顧客がビールを購入するなら、紙おむつも購入する『ビール⇒紙おむつ』」というルールを導き出したことになる。 近年、交通事故データ分析の研究領域でも、「アソシエーション分析」を用いた研究論文が散見される。例えば、Wang and Qin は交差点事故を起したドライバーを対象に、ドライバーの法令違反類型に影響を及ぼす要因を把握するために、この分析手法を用いる。また、Das et al.は歩行者の交通事故パターンを抽出するために、この分析方法を用いる。ここで、「アソシエーション分析」を行うために、Agrawalらによって提案されたAprioriアルゴリズムがある3)。このアルゴリズムは統計分析フリーソフト「R」にパッケージとして実装されており、どなたでも入手できる計算ツールである。 「アソシエーション分析」は、POS (Point of Sales)データなどの巨大なデータベースから、データの要素間の相関を、ルール(規則性)の形で抽出することが可能であり、データに内在する価値のある項目間の関係を把握できるメリットを持っている。ここで、ルールとしては、{A⇒B}の形で表され、Aを条件部、Bを結論部と呼ぶ。通常、ルールの重要性を表す評価指標に基づき、閾値の形で指標条件をユーザが指定することによって、条件を満たすルールを抽出する。最も多く用いられる評価指標は次の通りである4)。 (1)支持度 (support) )(BAp: AとBが同時に起こる確率である。例えば、「ビールと紙おむつを両方購入する確率」である。 (2)信頼度 (confidence) )(ABp: Aが起こったという条件の下でBが起こる確率({A⇒B}となる確率)である。例えば、「ビールを購入した人だけで見た際に、紙おむつも購入する確率」で、「ビールと紙おむつを両方購入した人/ビールを購入した人」と計算する。ここで、信頼度が高いものを見つけるのが「アソシエーション分析」の目的である。

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