県の特性を考慮した超高齢社会における交通安全対策に関する研究
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52-2.道路・交通環境・社会環境等も複合的に取り扱った研究 道路・交通環境に社会環境等も含めて事故の発生傾向について分析したものとして、渡部ら13)は、愛知県内で発生した事故を対象に、道路・交通環境の他、人口、用途地域、地形、各種施設数等の社会環境条件に着目して事故発生との関連性について分析しており、幹線道路の事故発生頻度と混雑時平均旅行速度や交差点間距離が密接な関係にあることや、非幹線道路では道路幅員や用途地域等の要因が事故類型間で異なることなどが示されている。 さらに、特定の地域でなく、マクロに地域間の事故発生傾向を比較分析したものとして、田久保ら14)は、市区町村または都道府県という自治体を単位として、交通事故死傷者数および死亡重傷者比率と、社会生活指標、交通事故の傾向等の関連性について分析するとともに、一部県(12県)のドライバーの運転意識の影響についても検討している。そして、都道府県別の交通事故死傷者数については、人口総数や製造業製品出荷額といった自治体の規模や産業活性度等がプラスに影響しており、立体横断施設数や横断歩道数といった道路安全施設の充実度がマイナスに影響していることが示されている。また、ドライバーの運転時における緊張性とも関連が高いことが示されている。 2-3.交通事故と意識の関係等に関する研究 交通事故と意識の関係に着目した研究も様々なものが存在する。森地ら15)は、交通事故の危険意識と事故の発生状況について分析した結果、危険を意識する方が事故が少ないことを実証している。嶋田ら16)は、若者の事故経験者の特徴として思いやりに欠ける特徴があることを明らかにしている。 松井17)は、交通事故死者数を削減するための方策を検討するための基本的な考え方の提案の中で、交通事故死者数をリスク暴露量と交通事故発生率の掛け算で考えることを示唆している。つまり、交通事故死者数を減らすためには、リスク曝露量や交通事故発生率を減らすことが効果的であるという考え方である。 13) 渡部数樹、中村英樹:道路交通環境に着目した交通事故発生要因に関する統計モデル分析,土木学会論文集D3(土木計画学)71(5),I_889-I_901,2015. 14) 田久保宣晃、高嶺一男:地域別の交通事故と社会生活要因の相関に関する分析,第18回交通工学研究発表会論文報告集,pp.93-96,1998. 15) 森地ら:交通事故の危険意識に関する考察, 土木計画学研究・論文集, Vol.12, 1995. 16) 嶋田喜昭,星野貴之,船渡悦夫,伊豆原浩二:若者ドライバーの性格と交通事故との関連分析,土木計画学研究・論文集,Vol.20,2003. 17) 松井寛:道路交通事故死ゼロに向けての歩みと今後の課題,豊田都市交通研究所年報,2008.

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