県の特性を考慮した超高齢社会における交通安全対策に関する研究
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585.終わりに 本研究では、都道府県別の交通事故の発生状況や、県の特性を表現する様々な指標との関係を分析し、高齢社会における交通安全対策のあり方の検討を行った。 第3章では、ドライバーに対するWebアンケート調査の結果から、交通ルールに対する認知度やルールの実践状況が、十分に高いとは言えない状況が確認できた。 第4章では高齢社会における交通事故対策のあり方の検討のために4種類の分析を行った。4-1と4-2では、高齢者が起こしやすい交通事故に着目し、それらの事故と様々な指標との関係を分析した。その結果、高齢者の交通安全対策としては、ADAS等の先進的なシステムによる予防安全対策を行うことや、全般的な交通安全対策として交通マナーの向上が求められることを指摘した。 4-3では、交通事故の特徴の類似性に着目した分析を行い、交通事故の特徴は都市の集積状況の影響を受けることを確認した。 4-4では、愛知県の事故発生状況に焦点を当て、交通事故類型や発生場所等の面から見た愛知県の交通事故の特徴を分析した。その結果、幾つかの特徴が明らかとなったが、愛知県が交通事故死者数ワースト1から脱するために必要なことは、人口あたりの交通事故死者数を3/4程度に抑える必要があることを確認した。 本研究では、データ収集の制約等から都道府県単位のデータを用いたが、そのためにきめ細かな分析ができず、十分な知見を得ることが困難であった。県別の運転者の意識は、JAFのデータを活用できたことでいくつかの知見を得ることができたが、本研究で行ったWebアンケート調査では全国で1,500足らずのサンプルを集めたものの、都道府県単位では十分な数にはならず、有効な成果を得ることができなかった。 また、ITARDAの委託集計により交通事故データを入手したが、費用の制約のために集計項目を限定することや、詳細なクロス集計を行うことが可能なデータが入手できず、この面でも満足の行く分析を行うことができなかった。交通事故データベースを開放し、多くの参加者により様々な分析が行われることが、我が国の交通安全に寄与すると考える。

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