県の特性を考慮した超高齢社会における交通安全対策に関する研究
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434-2-2.結果 (1)全事故、死亡事故 高齢者の事故の特徴を明らかにするため、重回帰分析により得られた全人口のモデルと高齢者のモデルの比較し、その違いを考察する。 1)全体的な傾向 全事故と死亡事故で共通に採用されているのは雪日数率である。符号が負であることから、雪日数が多いと全事故や死亡事故が起こりにくいと言える。積雪のある日は自動車の利用を控えていることも考えられる。 全事故では自動車分担率が、死亡事故では都市計画面積当たりの市街地走行キロが有意となっている。前者の符号は正であり、自動車分担率が高いと事故が起こりやすいと言える。また、後者の符号は負であり、都市内で多く自動車が走行する、つまり都市の集積が進んでいる地域では死亡事故が起こりにくいと言える。また、死亡事故では市街地平均速度が有意となっている。全人口でも高齢者でも符号は正であり、市街地の平均速度が高い、すなわち自動車が高い速度で走行する地域では死亡事故が起こりやすいと言える。 2)全人口と高齢者の違い 人口当たり全交通事故件数についてみると、有意な変数の中で全人口と高齢者の事故で異なる変数が採用されているのは、千人あたり信号箇所数(高齢者で採用)、不要なクラクション(全人口で採用)である。前者の千人あたり信号箇所数が高齢者で採用されているのは、高齢者に出会い頭事故が多いことが関係している可能性がある。 次に、人口当たり死亡事故件数についてみると、全人口と高齢者で異なる変数が採用されているのは、1人当たり県民所得(全人口で採用)、10万人当たりコンビニ店舗数、1人当たり輸送機器製品出荷額等、免許保有者あたり違反件数(高齢者で採用)である。コンビニ店舗数や違反件数の変数の符号は負であり、これらが多いと高齢者の死亡事故が少ない傾向にある。これらの指標は都市の密度を間接的に表すものであり、これが高齢者の死亡事故を説明する要因となっている可能性がある。また、輸送機器製造品出荷額等では変数の符号が正であるが、この情報のみでは考察が困難である。本指標と比較的相関が高いのは「横断歩道で一時停止しないクルマが多いと感じる割合」(相関係数0.344)、「可住地面積当たりの総道路延長」(同0.338)であり、いずれも相関係数は決して大きくないので断定的な言い方はできないが、自動車優先や道路整備優先の考え方が関係しているとすれば、それらを是正する対策が求められるだろう。

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