県の特性を考慮した超高齢社会における交通安全対策に関する研究
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11.はじめに 1-1.研究の背景 交通事故死者数は、状態別では歩行中が最も多く、中でも高齢者の割合が大きい。コンパクトなまちづくりが進展すると、都市内を歩く高齢者が増加し、高齢者が関連する事故の増加が懸念される。 運転者意識への対策は、従来の対策が実施されており、積極的に改善されていないように思われる。また、地域の名をとって「○○走り」などと言われるローカルルールが存在する一方、運転者意識への対策は地域性を十分に考慮しているとは言えない。運転者の地域性も考慮した、超高齢社会に対応した交通安全対策が求められる。 我が国の死傷事故件数に占める歩行中の割合(図 1-1)を見ると、都道府県により大きく異なっているが、これまで国内で都道府県別の運転者の意識に着目した研究はあまり見られない。 0%5%10%15%全国北海道青森県岩手県宮城県秋田県山形県福島県茨城県栃木県群馬県埼玉県千葉県東京都神奈川県山梨県長野県新潟県富山県石川県岐阜県静岡県愛知県三重県福井県滋賀県京都府大阪府兵庫県奈良県和歌山県鳥取県島根県岡山県広島県山口県徳島県香川県愛媛県高知県福岡県佐賀県長崎県熊本県大分県宮崎県鹿児島県沖縄県都道府県別の交通事故死傷者数に占める歩行中の交通事故死傷者数の割合(H20~H24)H20H21H22H23H24 図 1-1 都道府県別の交通事故死傷者数に占める 歩行中事故による死傷者数の割合の推移(2008年~2012年) 1-2.研究の目的 超高齢社会における交通安全対策を考えるヒントを得るため、地域で異なる運転者の意識への対策による交通安全の推進可能性を検証し、県民性を考慮した新しい交通安全対策の方向性を探ることを目的とする。 研究を進めるに当たっては、運転者の意識を取り入れるとともに自動車そのものに対する意識なども含む文化的な側面(自動車産業都市、自動車依存型都市、公共交通利便都市など)を県民性として捉え、それらを踏まえて地域に応じた交通安全対策を提案することを目指す。 また、コンパクトなまちが実現した超高齢社会における新たな交通安全対策のあり方を検討するため、生活道路等における歩行者が巻き込まれる事故に焦点を当て、交通事故の発生状況と各種の要因(道路状況、安全運転意識、県民性)を踏まえた、ソフト・ハード両面の提案を行うことを目指す。 例:A県民はKY意識が弱い→KYトレーニングの強化の提案(KY:危険予知) B県民の運転は自信過剰→安全運転支援システムの普及促進の提案 C県民は速度超過が多い→ISAやDSDSの導入促進の提案

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