助言型ISAの長期効果の計測およびインセンティブプログラムの効果検証
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-61- 8.まとめと今後の展開 8-1.助言型高齢者への効果と受容性のまとめ • 高齢者はISA機能を稼動させていない状態においても、比較的速度遵守に心がけており、それは走行データにも表れている。 • ISA機能の情報提供により、規制速度遵守率は高齢者・非高齢者とも高まる。特にインセンティブを付与した群の遵守率向上は大幅である。 • 高齢者は助言型ISAの経験によって変容した行動が、非高齢者よりもその後も継続する傾向にある。 • 特に補助幹線道路のような比較的規制速度の高い道路では、高齢者はインセンティブに拠らず遵守率は高まり、機能をOFFにした後も効果が継続する傾向にある。 • 意識の上では高齢者・非高齢者とも30キロ規制道路で「最高速度を意識するようになった」という傾向が強い。 • 高齢者は機器の操作を忠実に実行しようとするが、それが負担につながっている。また、操作に不慣れなことに起因する「不具合」を多大に感じている。これらのことから、なるべく操作が容易な車載機の開発が望まれる。 8-2.助言型ISAアプリの活用可能性 今回の実験で収集したデータは、いわばプローブ情報であり、実際の道路上を走行した車両の貴重なデータである。そこで一般的なDRMへのマップマッチングを実施し、今後の活用に備えることとした。 具体的には、例えば加速度の大小から急ブレーキ多発箇所を抽出することで、危険箇所を見出すことができる。あるいは、規制速度の遵守状況をリンク別に集計することで、速度超過の多発するリンクを見出すことができる。そのリンクの沿道状況を詳細に分析すれば、速度超過をしやすい道路条件を明らかにすることができ、速度規制のあり方や速度超過を防ぐための道路環境整備のあり方を考察することができる。 今後、以上のような研究テーマに関して取り組んでいく予定である。 8-3.交通行動変容を促すインセンティブの可能性 近年、例えばソニー損保の「やさしい運転キャッシュバック型」のように、急発進・急加速を抑えた滑らかな運転に対して、保険料をキャッシュバックで還元する「テレマティクス保険」と呼ばれる自動車保険が既に商品化されている。トヨタ自動車においても、純正の車載機を活用した情報提供サービスを開始している。 このように、インセンティブ付与によって、交通安全に寄与するためにより望ましい運転を促すことができると考えられる。例えば、本来は通過交通が入り込むべきでない居住地区の生活道路において、通過交通を排除するための仕組みを構築できる可能性もある。すなわ

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