高齢者のおでかけによるQOLの変化と中山間地域のまちづくり方策に関する研究
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(2)地域公共交通整備の方向性 中山間地域における高齢者の移動手段は自家用車が主流であり、運転できるまで運転し、免許返納後にはバスを利用したいという意向が確認された。また、コミュニティによる相乗りが日常的に行われている。この様な傾向は、本研究の対象都市以外の中山間地域や地方都市にも該当する実情だと想定できる。 深刻化する高齢化を踏まえると、自家用車を運転できない住民の移動手段として地域公共交通の役割が益々重要となる。地域公共交通は、表 5-2に示すような「地域特性」「施設立地」「路線の位置づけ」などを踏まえて整備・改善を進めていく必要があるが、本研究の対象地区である石野地区は商業施設や病院が一つも無く、多世代同居世帯が多い・移動販売があるといった地域特性を有している。さらに、自由に運行計画を立案できるのは地区内を運行範囲とする地域バス(フィーダー路線)である。 通常、地域公共交通は商業施設(買物)や病院(通院)への接続を念頭に路線を検討するが、この様な地域の実情を踏まえると、①交通結節点や主要バス停にて農産物を販売するなどの機能強化(小さな拠点づくり)、②年齢が増すに従って「楽しみ」の活動範囲が狭まる現状もあるため、移動手段がない高齢者が相乗りを頼まずに地域活動やサークル活動を行えるように地区の公民館等への接続を優先するなど、高齢者の主観的幸福感や、生きがいづくりに繋がる地域公共交通整備が望まれる。 表 5-2 地域公共交通の検討時に考慮する項目例 最後に、自動車で地区外に外出するような楽しみだけでは生きがい意識の高さに影響せず、楽しみを多く持っている高齢者において、生活動作能力が高く、生きがい意識も有意に高いことが明らかとなった。また、年齢が高まるにつれて楽しみの数が減り、活動範囲が狭くなる傾向がみられるため、高齢者の自立した生活を支援し・生きがい創りを誘発するには、地域活動や近所のサークル活動への参加を支える地域公共交通の役割に期待がかかる。 地域特性 住民の年齢構成 世帯構成割合 土地利用 移動販売の有無 など 施設立地 商業施設 病院 行政施設 など 路線の位置づけ 幹線 フィーダー 運行の担い手 など 43

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