豊田市でPHVを導入するメリットに関する実証的研究
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29 5. 結論と提案 5.1 本研究の結論 低炭素社会の実現に向け、次世代自動車の導入が必要である。特にマイカーへの依存性が高い地方都市では、次世代自動車の導入により運輸部門からのCO2排出量が大幅に削減できることが期待される。また、燃費が良い次世代自動車の導入による自動車ランニングコストの節約効果も期待される。そこで、本研究は、PHVのプローブデータやパーソントリップデータを用いて、地方都市である豊田市でのPHVの導入効果を検証することを目的として、議論を展開してきた。以下に、本研究で行った分析の概要と得られた知見を示す。 第2章では、豊田市低炭素社会システム実証実験の一部としてのスマートハウス実証実験から蓄積されたPHVのプローブデータを用い、トリップの平均速度、気温、起点と終点の高低差を考慮した実電費・実燃費推計式を作成した。分析結果より、トリップの平均速度の1乗、平均速度の2乗、平均速度の(-1)乗、起点と終点の高低差は電費又は燃費に与える影響が大きいこと、気温の2乗が電費又は燃費に対する有意な説明変数であっても、気温の1乗は電費に対する有意でない説明変数であることが分かった。 第3章では、第5回中京都市圏パーソントリップ調査データを用い、豊田市民の自動車保有行動分析を行った。分析結果より、豊田市で人口密度が高いほど、世帯の軽自動車のみを保有しない傾向があること、豊田市での鉄道の整備状況は自動車(乗用車、軽乗用車)の保有行動にほとんど影響していないことが分かった。 第4章では、2章で作成したPHVの電費・燃費推計式を豊田市民の自動車移動データに適用し、全ての乗用車をPHVに買い替えることを仮定し、PHVの導入効果を検証した。分析結果より、PHVの導入により平日、休日共に、CO2排出量を63.0%削減できること、藤岡地区以外の旧町村地域で平日、休日共に、乗用車のランニングコストは500円を節約できることが分かった。また、藤岡地区以外の旧町村地域では、ガソリン車と比較したPHVの追加イニシャルコストの回収年数が最も短く、2年以内であることが分かった。 5.2 PHVの普及方策に関する提案 本研究の結果を踏まえたPHVの普及方策に関する提案を以下のように示す。 1) PHV優先普及地域の設定 図4-8に示すように、平日、休日共に、CO2削減総量が最も多い地域は旧豊田市南部の一部、北部の一部、藤岡地区であることが分かった。これらの地域でPHVを導入させることは環境に対するメリットがより大きいことが分かる。そのため、これらの地域をPHV優先普及地域と設定し、PHVを普及させるような取り組みを更に進める必要があると考えられる。例えば、公共充電器の整備率の引き上げ、時間貸駐車場で駐車中は無料で充電、駐車

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