走行実態に基づいたスマートドライブの提案に関する研究
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77 5-2.速度マネージメント導入によるEV走行距離の変化 5-2-1.はじめに 過去に2人乗り小型電気自動車を実際に利用することを通して、同一市内の利用であれば、加速度は若干エンジン車より小さくても、一応利用可能であるとの評価を行った。この車両の場合、不安感なく使うことができた一充電走行距離は49㎞であり、最高速度が65km/h程度のため、高速道路の利用は想定外であった(参考文献 5-2)。 その後、電気自動車を取り巻く環境が変化し、大手の自動車メーカーが従来エンジン車と同程度の最高速度や加速性能を持つ電気自動車を市販するに至った。それらの車両の一充電走行距離は、カタログ上120㎞~200㎞であり、エンジン車の数分の1(from one third to one fifth, 1/3~1/5)、ハイブリッド車の1/10(one tenth)に過ぎない。 もっとも電池の容量を増やせば走行距離は伸びるが、電池容量に比例して車両価格が上昇し、また充電時間が長くかかることになり、現実的なsolutionではなくなる。また、このカタログの数値は実際の利用状況を十分に反映しておらず(参考文献 5-3)、現実の一充電走行距離はさらに短い。 そこで、電気自動車の現実的な導入可能性について、日本のある都市の住民を対象とした長期の乗用車の利用実態をもとにして、市販された電気自動車の利用がどの程度阻害されるかを解析し、電池容量が16kWh超であればほとんどの需要を満たすことを明らかにした(参考文献 5-4)。 今回、実際の一充電走行距離よりわずかに通勤距離が短い状況で電気自動車を利用しているボランティアの走行記録を入手できた。そこでは常に走行距離に対する不安が付きまとっている。この短い航続距離に対する不安感(This range anxiety)の低減に関して、車両開発等(参考文献 5-5)、電気自動車の運転経験(参考文献 5-6)等の研究がなされているが、本報告では、運転方法の変更による不安感の緩和について検討した。 5-2-2.研究方法 ①車両の諸元 データが収集された車両の諸元を表 5.1に示す。三菱自動車工業製の電気自動車iMiEV-Mであり、電池容量は10.5kWh、カタログ上の一充電走行距離は120㎞である。

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