公共交通としてのタクシーの活用可能性に関する基礎的研究
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34ころタクシーの会員はそれをアテにしている。ドライバーが迎えに行くと保育園の保育士さんも顔を知っているし、子供も固有名詞で呼んで、喜んでクルマに乗る。子供ってクルマの中でゲームばっかりやっているんじゃないの、というふうに言われるが、とんでもない。クルマの中で運転手さんとなぞなぞをしながらうちに帰る。うちに帰ったらお母さんにちゃんと引き渡して、その日あったことやクルマの中であったことをお話する。そういう固有名詞になるような関係で仕事をしている。これは全体の中の一部で、それから始めている。 安藤 おっしゃる通りでこころタクシーの取り組みは素晴らしいと思うが、それを採算ベースに持っていくのが難しいと思っているという意味だ。先ほど10~12時は魔の時間帯とおっしゃったが、この時間はビジネスの時間帯なので、ビジネス客を対象にしようとすると違う仕組みも一緒にやらなければならなくなる。サービスの対象が変わる中で、矛盾をどう解消していくか、違う客層にどうやって対応するのか。組み合わせていこうとするときにどうしても穴ができてしまって、機能しなくなってしまうのではないか。先ほど話にあった、ビジネス効率性とサービスの緻密性のマッチングをこれからの高齢社会でどうやって実現するのかなと感じている。 関口 高齢者が病院に行く時間は決まっているので、10~12時などある時間帯がすっぽり空いてしまう。そこのところを工夫しなければならないと思っている。 横軸の需要喚起については現場から幾つか声が上がってきているのでいくつか実験しようと思っている。もう一つの縦軸については、例えばクルマが何台かあったとすると、そのうちの1台は観光にスポットを当てるとか。最近面白いと感じたのは、いつも利用しているおばあちゃんが今度、墓参りに行きたいというので、家族と一緒に連れて行ってほしいというのがあったので、1日いくらでやりましょうという話になり、家族を乗せて東京から茨城県に土日に連れて行くということをやった。これはスポットである一定の金額を取るので、そういうものをどうやって織り込んでいくか。儲かるというと申し訳ないが、縦の軸でいくつかきちっとした仕事を確保するということと、横軸での商品開発、この両方をやらないと、あるエリアで今までと同じようなタクシーのやり方でやっても、まして、子どもや高齢者を対象としてもその時間は人が動かないので、何かいくつかの組み合わせ、車両もタントだけではダメでいくつかの車種を用意しなければならない。 筒井 タクシー業界のユーザーは需要の変動が大きいが、それを運転手の給料を歩合制にすることでマッチングさせて何とかやっているが、一方で、利用の平準化をさせる、さらに運転手の稼働時間の平準化もさせるということなので、固定給を前提とした制度設計になっているということだが、需要の変動量がこんなにあるのに、固定給の制度設計でやっていくというのは、均衡するのか?
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