公共交通としてのタクシーの活用可能性に関する基礎的研究
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195.タクシーの公共交通としての活用の方向性 前章までの検討において、市町村の交通施策におけるタクシーの活用状況として、以下のようなことが明らかとなった。 • 中部地方においては、中山間地域を除き、タクシーは広く供給されており、地域公共交通施策に活用できるポテンシャルは高いと考えられる • 市町村ではタクシーチケットの配布という形でタクシーを活用した施策が行われているものの、現在のところ公共交通計画への位置づけはあまり行われていない また、事業環境とタクシー事業者の経営者の意識の関係を分析したところ、以下のようなことが明らかとなった。 • 事業者の規模を示す保有台数は事業環境と関係があり、事業環境が厳しいほど小規模な事業者が多い傾向にある • 市町村の交通政策には、名古屋、都市地域(小)において関心が薄い • 事業環境と交通課題の認識状況には関係性があまりないが、今後の事業展望には影響が見られる • 経営者の事業展望と、交通政策への関与、地域の交通課題の認識状況には関係があり、拡大志向の事業者ほど政策の関与や交通課題の認識をしている これらのことから、タクシーを活用した交通施策は、広範な地域で実施できる潜在的な可能性を秘めているものの、その実施について、市町村やタクシー事業者の認識は低いことがわかった。ただし、事業環境に関係なく、タクシー事業者の経営者が地域の交通課題を認識している場合、それに対する貢献の意識が強いことも明らかとなったことから、タクシー業界への意識啓発によってタクシーを活用した公共交通施策の実施を広げていくことが出来る可能性があることも示唆される。 このとき、最も問題となるのは、タクシーを活用した公共交通施策のモデルが提示されていないため、取り組みが広がらないことである。そこで本章では、タクシーを活用した新たな公共交通施策の方向性について検討する。 【検討のポイント】 タクシー研究会での議論から、今後、タクシー業界の活性化と、タクシーを用いた公共交通サービス※という2つの方向性が出てきている(※「公共交通サービス」は、運賃を支払えば誰でも利用できるサービスであって、自ら運転するものは除く) タクシー事業者が収益を確保するための条件 • タクシーサービスについては、高付加価値型のものと、日常的な移動に使えるものの2つに大きく分化することで、それぞれ、マーケットを拡大する(現状のタクシーサービスは中途半端な位置にあり、市場規模も小さい)

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