公共交通としてのタクシーの活用可能性に関する基礎的研究
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83.中部地方におけるタクシーを活用した公共交通施策の状況 次に、愛知県内の54市町村を対象に、公共交通施策の実施状況と、タクシーを活用した施策の有無について調査した。調査は中部運輸局および各市町村のホームページに公開されている資料1)を用いて行い、愛知運輸支局の担当者に検証をいただいた。なお、調査データは平成26年8月現在である。 公共交通施策の元となる公共交通に関する計画の策定状況を図 3-1に示す。愛知県内においては6割以上の市町村において公共交通に関する計画が策定されている。なお、これらの多くは地域公共交通活性化・再生法に基づく地域公共交通総合連携計画であるが、一部の市町村においては計画が期限切れとなっており、失効した状態となっている。 これらの計画が対象としている交通モードを図 3-2に示す。ほとんどの市町村でコミュニティバスやデマンド交通を対象としている一方で、タクシーを対象としているのは8市町村(うち3町村は合同で会議を設置)にとどまることがわかる。これら8市町村の具体的なタクシーに関する記載内容をまとめたものを表 3-1に示す。 コミュニティバスやデマンド交通の運行に取り組み市町村は非常に多い(図 3-3、図 3-4)一方で、タクシーに関する施策を実施したり、計画に位置付けたりしている市町村は非常に少ないことがわかる。 一方で、計画には位置付けていないものの、高齢者や障害者を対象としたタクシーチケットの配布を行っている市町村は多い。そこで、中部運輸局が平成24年度に実施した調査から、愛知県内の市町村におけるタクシーチケットの配布状況を把握したものを図 3-5に示す。愛知県内の市町村のうち9割近くの市町村においてタクシーチケットの配布が実施されている。 なお、タクシーチケットの配布が行われていない市町村は、あま市、海部郡大治町、丹羽郡大口町、北設楽郡設楽町・東栄町・豊根村の6市町村である。 これらのことから、高齢者や障害者を対象としたタクシーチケットの配布は広く行われているものの、市町村の交通施策においてタクシーは明確に位置づけられておらず、したがって、タクシーチケットの配布が交通施策とは十分な整合を取らずに実施されている可能性がある。 なお、タクシーチケットの配布の条件は市町村によって異なり、障害者を対象としていても障害の等級によって取り扱いが違うことがある。高齢者についても、年齢や要介護度といった条件を付している市町村も多い。

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