交通事故の予防対策地点抽出に向けた研究
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553-4-3.危険度の算出 (1)危険度の考え方 重篤な交通事故の予防対策の観点から対策実施の優先度を把握するため、リスクアセスメントの考え方を用いて、ヒヤリ指摘地点に危険度の指標を設定する。 本研究では、事故類型別の致死率を危険度とした。具体的には、公益財団法人交通事故総合分析センター(ITARDA)の交通統計[3]から、事故類型別・道路形状別の交通事故件数と死亡事故件数を用いて、死亡事故になる確率(致死率)を算出した。なお、事故件数および死亡事故件数は、公表されている最新年度である平成20年から24年の5カ年の全国の値を用いた。ただし、このデータにおいては事故類型が44に区分されており、さらに道路形状で区分した場合、発生件数が非常に少ない事故類型も存在する。このため、中村ら[4]と同様に、類似の事故類型はまとめることとして、11類型に集約・区分した。また、列車事故は対象から外した(表 3-8)。 集約した事故類型別・道路形状別交通事故件数を表 3-9に、死亡事故件数を表 3-10に示す。これらを用いて、各事故類型別・道路形状別交通事故に占める死亡事故の割合(致死率)を算出した結果を表 3-11に示す。表 3-11からは、以下のような傾向が把握できる。 ① 人対車両の事故は死亡事故にいたる割合が高いが、特にカーブや交差点付近における横断中(横断歩道以外)の事故は死亡事故にいたる確率が高い ② 車両相互の事故は全体的に死亡事故にいたる割合が低いが、交差点付近やカーブにおける出合頭事故においては相対的に死亡事故にいたる割合が高い ③ 車両単独事故においては死亡事故にいたる割合が高い ④ 踏切・その他の地点においてはいずれの事故類型であっても死亡事故にいたる可能性が低い 具体例として、カーブや交差点前後において横断歩道以外を渡っている歩行者に車両が衝突した場合には、死亡事故にいたる可能性が非常に高いことが分かり、このようなヒヤリ指摘があった場合、重篤な事故の潜在的な可能性が高いと推測される。 (2)調査結果への危険度の付加 調査結果に危険度の指標を付加するにあたっては、電子化された調査結果(表 3-6、表 3-7)から道路形状と事故類型を特定し、表 3-11から該当する危険度をそのヒヤリ指摘の危険度として、データベースに付加した。 なお、11分類に該当する事故類型を特定するに当たっては、事故類型がすぐに判別できるように調査票に準備された選択肢(小学4年生では状況1~状況4、保護者・ご家族では状況1~状況8)の回答結果に加えて、その他の自由記述欄の回答内容も利用した。 具体例として、カーブで横断歩道以外を横断中に自動車とぶつかりそうになったというヒヤリ指摘は、道路形状はカーブ、事故類型はその他横断中に該当し、危険度として9.55%

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