ゾーン30選定方法に関する研究
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5 ル解析を適用するために自己相似性からのずれを考慮したモデルを提案し、街路形態を定量的に評価できることを確認している。また酒見10)は道路網、オープンスペース、公園緑地などの都市空間と建物により構成される都市の形態についてフラクタル解析を用いることでその複雑性を定量的に表現することを試みている。 田村ら8)によって提案される迷路性は、複雑な街路が生み出す性質のことであると定義される。田村ら8)によって、街路網の複雑さを的確に表すことができ、 計画・設計に用いやすく計算が容易であるとともに、より歩行者に近い視点に立ち、ブロック形状や見通しを簡潔に表現する指標が提案されている。そのひとつが、形状指数という街区を構成するブロックの形状の複雑さを表現する指標である。当該指標は街区ブロックの外周長に対する街区ブロックの面積の平方根で表現される。図2-3に具体的な算定方法を引用している。形状指数は街区ブロックが正方形であるときに0.25の値をとり、街区ブロックが複雑になるほど小さい値をとる。なお、田村らは8)見通し距離という形状指数では表現できない街路の複雑さを表現する指標を提案している。しかし原宿、新宿、下北沢、自由が丘、渋谷、池袋を対象とした解析の中で、見通し距離は形状指数との相関係数が高い(R=0.889)などの傾向を示していることから、形状指数のみでも迷路性は表現できるものと考えられる。 フラクタル次元は都市計画の分野における評価方法として数多くの文献で引用されている。しかし、本研究のような面的交通安全対策箇所を選定するために小規模街区別のフラクタル次元を個別に算出することは極めて煩雑であるとともに、解析範囲の設定方法が難しいなどの課題もある9)。他方、形状指数の考え方は、高野ら8)の研究でその有効性が確認されるとともに、計算が容易などその扱いやすさが特徴的である。わが国での応用を考慮するならば、この指標の扱いやすさは重要な視点となりうる。 以上より、本研究では、形状指数を生活道路ネットワークの特徴を表現する指標として取り扱うことを検討する。検討にあたって以下では愛知県豊田市をケーススタディとして形状指数を算定し、その特徴を確認するとともに、生活道路で発生した交通事故との関係性について回帰分析を行うことで検証を行う。 図 2-3 形状指数の算定方法8)

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