ゾーン30選定方法に関する研究
4/24

2 2.面的な交通安全対策に適用可能な道路ネットワーク理論の整理・検討 面的な交通安全対策に適用可能な道路ネットワーク理論を整理するにあたり、ここでは、以下のような視点を考慮する。まず、本研究の目的の一つが生活道路での交通事故発生予測モデルの構築にあることから、国内外における特に生活道路に着眼点を置いた道路ネットワークの特徴と交通事故の関係性について整理する。また、道路ネットワークの特徴をより適切に表現できる指標について検討を行う。さらに、交通事故発生予測に適する統計モデルの検討を行う。その際、面的な交通安全対策を推進する上で予測すべき交通事故の類型についても検討を行う。 2-1.生活道路ネットワークの特徴と交通事故の関係性 生活道路に着眼点を置いた生活道路ネットワークの特徴と交通事故の関係性についてみた研究は国内外を通じて極めて少ない。例えば、高松ら1)は道路の幾何学的繋がり方の分析手法であるスペースシンタックス理論を用いて地点の事故リスクを推計する重回帰モデルを構築し、千葉県鎌ケ谷市を対象に当該モデルの適用を試みている。また坂本ら2)は交通事故発生件数を道路状況および交通状況に関する指標値により説明する重回帰モデルおよびポワソン回帰モデルを構築するとともに、残差が大きくなる交差点等を除外したロバスト回帰を適用することでモデル精度の向上を図る取り組みをしている。これらの研究は生活道路ネットワークのみに着眼点を置いているわけではなく、道路ネットワーク全体を通じた推計モデルとなっている。 また、海外においても生活道路ネットワークと交通事故の関連についての研究は少ない。H. Marks3)はロサンゼルスにおいて1951~1956年の間に少なくとも1件事故が発生した交差点の傾向を整理している。結果としてグリッドパターンの交差点では全体の50%で1件以上事故が発生していたが、アクセス制限がなされた交差点では全体の8.8%でしか発生していなかったことが示されている。ただし、当該成果は交差点の出会頭事故に限定していること、交差点以外が考慮されていないこと、土地利用や人口動態など様々な社会指標を考慮していない。W. E. Marshalla & N. W. Garrick4)はカリフォルニアの24都市で1997年から2007年までに発生した生活道路の交通事故について、個人特性とネットワーク構造かを説明変数とする負の二項回帰モデルを構築し、要因分析を行っている。結果、生活道路のネットワーク形状は事故の深刻さに関係しており、特に図2-1に示すLine Tree形式、Radial Grid形式が特に事故が多いこと、交差点密度の高い生活道路エリアは事故が少ないこと、生活道路のノード接続の多さと周辺幹線道路の車線数の多さが事故に直結していることなどを明らかにしている。S. M. Rifaat, R. Tay & A. de Barros5)はカナダのカルガリーを対象とし、図2-2に示す街路の4パタンと歩行者、自転車が巻き込まれる事故の関係性を整理した。説明変数には街路パタンに加えて道路構造、運転者の特徴、事故の形態、環境条件、車両特性も考慮し、多項ロジットモデルによって街路パタンの事故リスク(被

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る