ゾーン30選定方法に関する研究
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14 に示した予測値と観測値のヒストグラムの傾向から考察すると、いずれの事故についても負の二項回帰モデルより当てはまりが悪いことがわかる。このように負の二項回帰モデルは既往研究6)同様、他のモデルに比べて全体的なモデルの当てはまりがよいといえる。ただし、観測値からのズレの程度を示す残差平方和をみると、負の二項回帰モデルはいずれの事故についても他のモデルと比べて値が大きく、過大もしくは過小予測をする箇所が他のモデルより多くなっている。このような過分散が確認される状況については、観測されていない個体差の影響が予想される22)ことから、他の説明変数の検討とともに、ランダム効果を考慮した一般化線形混合モデルへの拡張などの検討が必要であるかもしれない。 以下では全体の当てはまりがよい負の二項回帰モデルにおける考察を進める。変数の傾向についてみると、道路ネットワーク関係の指標では、接続ノードと幹線道路延長が、周辺土地利用関係の指標では準居住地域面積、第2種住居地域面積、商業地域面積が、いずれの事故においても選択されていない、もしくは有意となっていないなど、モデルに対する影響がない、もしくは小さいことがわかる。他方、総人口はすべての事故において高度に有意(P<0.001)となっているなど、その影響力が大きいことがわかる。道路ネットワーク関係の指標では、平均形状指数、交差点が死亡・重傷事故を除いて高度に有意(P<0.001)となっているなど影響力が大きい。また、各変数の符号に着眼すると、高齢化率はいずれの事故においても符号がマイナスとなっている。これは高齢化率の高い地域が中山間地などそもそも生活道路が少ないうえに自動車の走行頻度の少なさなどから構造的に交通事故が発生しづらいことが原因の一つとして考えられる。 以上のように構築した生活道路の交通事故発生レベル予測モデルから、例えば以下のように面的な速度抑制をすべきエリアの提案ができる。まず人口の多い、もしくは今後人口の増加が見込まれる地域は、死亡・重傷事故を含めた生活道路での交通事故の多さが予想されるため、積極的に面的な速度抑制を検討するべきである。また、平均形状指数が高い値を示す区画整理がなされている、もしくは今後なされるなど街区が極めて正順化され多くの交差点が包含されるような地域においても、生活道路での交通事故の多さが予測されることから積極的な面的速度抑制を検討すべきであるといえる。その他、多様な施設が配置される近隣商業地域に用途指定される地域なども対策地として検討に加えるべきであるといえよう。以上のような観点から面的な速度抑制を検討することが生活道路における交通事故の削減を目指すうえで効果が期待できるといえる。

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