ICTを活用した速度提示に関する社会実験(その2)
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19 4-2.被験者の走行実態とその変化 走行Logデータを集計した結果を示す。なお、今後の第2期実験により収集したデータと併せて精査し最終的なマスターデータを構築する予定であるため、本年度の報告書では暫定的なデータによる集計として掲載する。 下図は、各被験者の実験期間中の日平均走行距離と速度超過率(規制速度を超過して走行した距離の割合)を、生活道路(ゾーン30地区内と最高速度規制の無い生活道路)と補助幹線道路(最高速度40~50km/h 規制、インセンティブプログラムは適用外)についてそれぞれまとめたものである。速度規制の無い生活道路については、本来は 30km/h 以下での走行が望ましいという考えから、30km/hを超過した割合を集計している。 まず走行距離を見てみると、被験者間で走行距離に大きな差があることや、Phase 間の変化が大きい被験者、あまり変化のない被験者など、さまざまであることが見て取れ、グループ毎の集計による特性傾向の把握は被験者数が少ないということもあり注意が必要である。 ISA 機能を ON にした Phase 2 においては、生活道路では 20名中 16名が、補助幹線道路では 20名中 13名の走行距離が Phase 1よりも少なくなっている。特に Penalty 群の被験者らは、走行ルールの対象となる生活道路において、その傾向が顕著である。これらのことから助言型ISAによる速度警告が、走行距離に関して何らかの影響を与えた可能性が示唆される。 次に速度超過率を見ると、生活道路では 20名中 19名が、補助幹線道路では 18名の被験者が Phase 1よりも Phase 2 での超過率が低くなっている。特に生活道路におけるルールを適用したグループの中には、大幅に超過率が減少した被験者が散見される。さらに ISA機能を再び OFF にした Phase 3 の超過率は、Phase 1 よりも低く抑えられている被験者が多数見られる。 図中に記した各グループの超過率の平均値を見ると、いずれのグループも Phase 2の超過率が最も低くなっており、さらに Phase 3の超過率は Phase 1 よりも低い値となっている。そこで Phase 間の平均の差の検定をグループ毎に行ったところ、生活道路における Penalty 群、Reward 群、補助幹線道路における Reward 群に関して、Phase 1 と 2 の間に有意な差が認められた(有意水準1%、それぞれP=0.0092、0.0056、0.0031)。また生活道路の Penalty 群に関しては、Phase 1 と 3の間にも有意な差が確認できている(有意水準5%、P=0.0478)。 これらは、本研究で開発した助言型ISAシステムの効果を示唆するものであると言える。すなわち、① ISA機能の稼働により規制速度遵守が促されること、②インセンティブの付与によってその効果は向上すること、③ルール適用外の道路走行においてもその効果が現れる可能性があること、④ ISA機能が除かれた後も一定の効果は継続する可能性があること、等が知見として得られた。

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