ICTを活用した速度提示に関する社会実験(その1)
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11.はじめに 1-1.背景と目的 生活道路の安全・安心な空間構築に向けて、近年、面的な最高速度30km/h規制である「ゾーン30」の整備が進められている。平成23年9月に警察庁から出された通達1)によれば、ゾーン30は平成28度末までに全国で3,037箇所、愛知県下においても215箇所の整備目標が掲げられている。警察庁の報告によれば、平成26年3月末時点で、ゾーン30は全国で1,111箇所整備が行われ、愛知県では118箇所の整備が完了している2)。 このようにゾーン30の整備推進が進む中で、その実効性を担保する対策の更なる推進が求められている。警察庁からのゾーン30の推進に関する通達には、「従来のコミュニティ・ゾーン対策において実施してきた一方通行規制、大型自動車等通行禁止規制、物理的デバイスの設置等の対策は、いずれも有効な手法であり、ゾーン30においても推奨される」とあり、このような対策の同時並行的な推進が期待されている。しかし、このような効果が極めて高い対策群の推進は一般に住民の合意形成の困難さ、および設置箇所の道路構造的制約により往々にして容易に進まないことが多い。そのため、本来の狙いである速度抑制に対して十分な効果が確認されていない対策の実施にとどまったり、もしくはそれすらも行われず単に最高速度の区域規制を実施したのみといった地域すら散見される。このような実態は、ゾーン30の整備推進そのものに対する不信感を地域住民に対して与えかねないなどの根幹的課題を生じさせることになる。 海外等に目を向けるとこのような物理デバイス等の整備が困難な地域において、ITS技術により車両の速度超過と連動する電光掲示板(Dynamic Speed Display Sign以下、DSDS)等を用いた速度抑制策が積極的に実施されている。効果が確認される事例も散見されるなか、わが国での適用に向けた議論の重要性が増していると考えられる。昨年度より、(公財)豊田都市交通研究所、豊田工業高等専門学校、(株)キクテックは、共同でDSDSに関する基礎研究を進めている。本研究は複数のゾーン30(公道)におけるDSDSを適用し現在3社で進めている共同研究の成果をベースに、図1-1に示すようなマイクロ波で計測された速度超過を知らせるDSDSを公道上(豊田市、刈谷市)で実施することにより、効果検証等わが国のゾーン30におけるDSDS導入に向けた基礎的知見と課題を整理するものである。

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