平成25年度 公共交通としてのタクシーの活用可能性に関する基礎的研究
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1.はじめに 1-1. 研究の背景 24時間365日、ドアトゥドアの移動を提供するタクシーは、深夜や病気・ケガのとき、また、自家用車を運転できない高齢者や障がい者にとって必要不可欠な移動手段である。 しかしながら、タクシー業界を取り巻く環境は厳しく、都市部においては車両数の増加と乗客の減少による労働環境の悪化などが生じており、国によってタクシー協議会における共同減車の取り組みが行われているが、タクシー業界を活性化する議論には至っていない。 また、地方部においては事業者の廃業などの問題が生じている。地方におけるタクシーの廃業は、最後の移動手段が消滅することを意味しており、地域社会にとって著しい損失であるが、これに対して有効な手立ては存在しておらず、市町村による取り組みも行われていない。 地方部においては、バスでは供給過剰となってしまう移動ニーズが存在しており、その対応としてデマンド交通や有償運送などが行われているが、タクシーやタクシー事業者の活用によって解決できる問題も存在すると考えられる。 タクシー事業者が持つ、車両や人材、予約配車システムを活用することで、これら地方における移動の問題を解決し、かつ、タクシー事業者のビジネスチャンスを生み出すことが可能であると考えられる。 1-2. 研究の目的 本研究では、地域が直面している移動の問題のうちタクシーおよびタクシー事業者を活用することで解決可能なものを明らかにする。そのためにタクシー事業者の持つ資源を把握し、地域の交通問題の解決にタクシー事業者がどのように貢献できるか(タクシー事業者から見れば、どういうビジネスチャンスがあるか)を明らかにする。さらに、タクシーという交通機関の持つ特性を整理し、それによって実現できるサービスを行政・住民に提案し、タクシーの公共交通としての活用可能性を示すことを目的とする。 そのために、今年度は、タクシーを公共交通として活用するための検討を行う基礎的なデータを収集するために、タクシー事業者の実態を把握するための調査を実施した。 1

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