道路交通環境下における知的障がい者の交通コミュニケーション能力の把握とその応用
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6 2-2.道路交通環境下での課題事象の調査 2-2-1.調査の概要 表 2-4に調査概要を示す。調査は豊田市に居住する療育手帳のみを保有する知的障がい者の介助者を対象に実施した。本調査の精度と規模については、次のように設定した。まず豊田市では、平成24年4月現在、2,489名の療育手帳保持者が居住している12)。既往研究の成果5)から、その約3割が重複障がい者であるとした場合、療育手帳のみ保有する知的障がい者は、おおよそ1,750名程度となる。ここで、信頼度95%、誤差の幅5%で推定することを目指すとすると、無作為に抽出された315名からの有効回答が必要となる。以前実施した類似調査13)では回収率が52%であったが、安全率をとり無作為に抽出された療育手帳のみを保有する1,000名程度の方に調査票を配布することとした。 以上より、豊田市福祉保健部障がい福祉課との協働による調査を企画し、豊田市が保有する障がい者手帳台帳のデータを活用し、対象者を無作為に1,000名抽出し、郵送配布、回収による調査を行った。宛先不明により返送された調査票を除くと、総配布は968票、回収423票(回収率44%)となった。なお、回答を頂いた介助者の96%が知的障がい者の家族であった。 主な調査項目は、個人属性、交通特性、道路交通環境下での課題事象、介助者の教育方針、今後予定している模擬市街地におけるフィールド実験への協力意向などである。 回答者の個人属性は、6割が男性で、年齢は65歳以上の高齢者が1割未満と極めて少ない。これは一般的な知的障がい者の年齢分布の傾向と合致している。障がいの程度による構成割合に大きな差はなく、豊田市における療育手帳交付者のものともさほど大きな違いはみられない。知的障がい以外の特性では自閉症(4割弱)やてんかん(2割弱)があるという被験者がやや多かった。特徴的行動は、「落ち着きがなく無意味にうごきまわる」や「やたらにものを貯め込む」といった被験者が2割弱おり、自傷、他傷傾向がある被験者は1割弱と比較的少なかった。 表 2-4 調査概要 (1)調査対象:豊田市に居住する療育手帳のみを保有する知的障がい者の介助者 (2)調査方法:豊田市福祉保健部障がい福祉課との協働による調査を企画し、豊田市が保有する障がい者手帳台帳のデータを活用 (3)配布・回収方法:郵送配布・郵送回収 (4)調査票配布日時:平成25年4月11日 (5)配布・回収数:宛先不明により返送された調査票を除くと、配布968票、回収423票(回収率 44%) (6)調査項目: 1)個人属性:主に、障がいの程度、他の障がい(ダウン症など)の状況、日常生活能力(豊田市の療育手帳交付申請資料、厚生労働省調査を参考に作成) 2)交通行動特性:交通手段別外出頻度、介助の必要性、目的 3)道路交通環境下での課題事象(歩車道、公共交通の視点から) 4)介助者の教育方針(歩車道、公共交通の視点から) 5)模擬市街地におけるフィールド実験への協力意向

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