道路交通環境下における知的障がい者の交通コミュニケーション能力の把握とその応用
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68 4.知的障がい者の交通コミュニケーション能力を応用した道路交通環境整備の方向性 交通コミュニケーション能力について、特に道路交通環境下での課題を解決する上で必要とされる能力として、総合能力、能動的意思疎通能力、突発的変化への対応能力の3視点から整理し、当該能力が特定の個人属性や日常生活能力によって差が生じること、さらに上記能力は交通行動の実現に影響を与えていることを示した。また、課題解決に向けては、介助者の教育方針が一つのキーポイントになるが、ここでは、総合教育量、外出促進型教育、外出抑制型教育の視点から整理を試み、現状として、知的障がい者の個人属性、日常生活能力によって教育の内容に違いがみられ、それは多様な交通行動の実現にも関係していることを示した。 ここでは、これらの結果を踏まえた道路交通環境整備の方向性について以下のように提案する。 (1)個人属性を加味したサポート体制の構築 脳性マヒ、ダウン症、高齢などの個人属性により交通コミュニケーション能力が低いと考えられる方々に対しては、STS(スペシャル・トランスポート・サービス)などによる支援体制の強化、構築が重要となる。 (2)外出抑制型教育から外出促進型教育への転換支援 個人属性からみた場合に外出抑制型教育である必要がない方々に対する外出促進型教育への転換を促すセミナー開催、パンフレット作成など様々な形で支援する。 (3)合理的配慮がなされた道路交通環境整備の実施 図 4-1は介助者の教育方針と交通コミュニケーション能力の関係性を示している。これをみると、能動的意思疎通能力の高さと外出促進(抑制)型教育の関係性は明確である一方で、突発的変化への対応能力は教育方針との明快な関係性がみえないことがわかる。このように、知的障がい者の交通コミュニケーション能力のうち、特に「突発的変化への対応能力」は教育的対応でもってしても解決が難しいことが予想される。よって、当該能力が必要とされる課題については、空間整備などのハード的対策を進めていくことが望ましい。 具体的には、「突発的変化への対応能力」に位置づけられた以下の項目について次のような提案を行う。 「駅員や運転手に早口で立て続けに話しかけられると混乱してしまう」 この課題に対しては、駅員に対するきめ細やかな教育の実施がひとつの効果的手法であると考える。 「駅で突然、電車の入るプラットフォームなどが変更されても気づかず目的地の違う電車に乗ってしまうことがある」 「通り慣れた道路が工事などで通行止めになると、目的地に辿りつけなくなることがある」 「駅やバス停に設置されている時刻表や案内板を理解したり、確認したりすることは難しい」 この課題に対しては、スマートフォンなどのモバイルデバイスによる情報提供システムの構築がひとつの効果的手法であると考える。 「歩行者と車の信号が分離された交差点など、ふだんと異なる仕組みで動く信号交差点では、混乱をしてしまう」

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