道路交通環境下における知的障がい者の交通コミュニケーション能力の把握とその応用
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28 3-3.評価指標と知的障がい者の特徴の関係性 ここでは、上述の分析で得られた評価指標が知的障がい者の特徴とどのような関係性があるのかを特徴別の主成分得点の平均点から整理する。整理の視点は、個人属性、日常生活能力、交通行動である。個人属性は性別、年齢、障がいの程度、知的障がい以外の症状、多動・攻撃・自傷・破壊・収集などの特性から関係性をみる。日常生活能力は排泄、着衣、お金、外出、会話、文字、数、社会性、作業といった能力の程度との関係性を整理する。交通行動は交通手段別同行の必要性、1週間あたりの外出日数との関係性をみる。 3-3-1.交通コミュニケーション能力と知的障がい者の特徴の関係性 図 3-4は主成分分析によって集約化された各交通コミュニケーション能力と個人属性の関係性を示している。まず、性別、年齢との関係性をみると、当該能力は性別による差はあまりみられない一方で、総合能力、能動的意思疎通力は年齢による差が大きく、特に高齢、若年で低いこと、突発的変化対応力もやや年齢による差がみられ、高齢ほど低いことなどがわかる。次に障がいの程度、知的障がい以外の症状との関係をみると、総合能力、能動的意思疎通力は脳性マヒ、障がいA判定、ダウン症、てんかん、自閉症で低いこと、突発的変化対応力は脳性マヒの低さ以外は大きな差はみられないことがわかる。次に、多動・攻撃・自傷・破壊・収集などの特性との関係性をみると、総合能力は対人攻撃性がある場合、能動的意思疎通力は対物破壊性、自傷性がある場合で低いこと、突発的変化対応力は自傷性、多動性がある場合に高いことがわかる。 図 3-5、図 3-6は各交通コミュニケーション能力と日常生活能力の関係性を示している。これをみると、いずれの日常生活能力も総合能力、能動的意思疎通力の高さに比例する一方で、突発的変化対応力はいずれの日常生活能力においても深刻な課題がある場合に高くなっていることがわかる。 図 3-7は各交通コミュニケーション能力と交通手段別の交通行動の関係性を示している。まず、同行の必要性との関係性をみると、総合能力、能動的意思疎通力、突発的変化対応力は同行の必要性に比例するが、時々必要とされる場合は特に突発的変化対応力でばらつきが大きいことがわかる。次に外出の程度との関係をみると、総合能力、能動的意思疎通力、突発的変化対応力が高い場合、路線バス、自転車、二輪車の頻度が多く、低い場合、自家用車、送迎バス、タクシーの頻度が多いことがわかる。 以上をまとめると、以下のようになる。総合能力と能動的意思疎通能力は類似した傾向を持ち、年齢、障がいの程度、知的障がい以外の症状(特に脳性マヒ、ダウン症、自閉症)、多動・攻撃・自傷・破壊・収集などの特性によって大きく異なるとともに、当該能力の高さは日常生活能力および外出時の同行の必要性に比例し、使用する交通手段の頻度も高い場合は複雑、単独での行動が前提となるものがより使われ、低い場合は同行が前提となるものが使われるなど能力によって異なることがわかった。他方、突発的変化への対応能力は個人属性、交通行動などの傾向は他の2つの能力と類似している一方で、日常生活能力との比例関係はみられなかった。この理由について以下のように考察する。日常生活能力がある程度低くなると、知的障がい者単独での外出が困難となり、一般的な交通行動などはすべて介助者と同行するとともに特定の交通手段に偏ると予想される。突発的変化対応力に代表される項目は、突発的であるがゆえに通常の生活の中で体験をしづらいものとなっており、経験に基づいた回答が得られなかった結果ではないかと考える。
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