道路交通環境下における知的障がい者の交通コミュニケーション能力の把握とその応用
24/93
22 3.知的障がい者の道路交通環境下の交通コミュニケーション能力の測定 3-1.交通コミュニケーション能力の測定方法 前章の結果を踏まえて、交通コミュニケーション能力の測定を行うにあたり、上述の分析より見えてきた知的障がい者において重要となる交通コミュニケーション能力や教育方針について測定できる指標を明示させていく必要がある。また、その実態について、様々な視点から把握していく必要がある。ここでは以下のような手順で進める。 まず、上述の交通コミュニケーション能力や教育方針を代表する評価指標の構築を行うため、ここでは多様な情報の集約化において有益な手法である主成分分析を行い、当該能力や方針を集約する主成分の有無を探る。具体的には、以下の方法で実施する。 1)スクリープロットを確認した上で任意の固有値以上の主成分を対象として抽出する 2)主成分間の関係を散布図により整理し、集約化された主成分の代表性を考察する 3)主成分得点を算出し、各課題と知的障がい者の特徴との関係性を分析する 使用データは、上述のアンケート調査で得られた道路交通環境下での課題および介助者の教育方針である。本データは「そのとおり」から「そうではない」の5段階で評価されているため、設問内容から課題が小さい(問題とならない)もしくは積極的に当該教育方針を採用している場合に5点、課題が大きい場合に1点を与え、主成分分析を実施する。 主成分の解釈においては、上述の特徴整理の結果から以下の視点を考慮する。まず、道路交通環境下で課題となる交通コミュニケーション能力について次のように考える。上述のように、知的障がい者は深刻な問題が発生した場合であっても自ら助けを求めるなどの行動を取ることが困難である。これを本研究では交通コミュニケーション能力のうちの「能動的意思疎通能力」であるとする。また、運行時間の変更など突発的変化への対応が困難であることから、これを本研究では交通コミュニケーション能力のうちの「突発的変化への対応能力」であるとする。次に、介助者の教育方針について次のように考える。上述のように、知的障がい者は当事者の意思に関係なく、交通コミュニケーション能力が低い、もしくは安全な交通空間が整備されていないという介助者独自の判断で外出が抑制される場合がある。これを本研究では介助者の教育方針のうちの「外出抑制型教育」であるとする。加えて、介助者によって当事者の単独外出や公共交通利用のための努力(教育)に大きな差が生じている。これを本研究では介助者の教育方針のうちの「教育量(努力)」であるとする。 次に、分析により得られた交通コミュニケーション能力や教育方針について測定できる指標と知的障がい者の特徴との関係性を分析し、さらに、当該指標が実際の知的障がい者の道路交通環境下での挙動とどのように結びついているかについて実証実験を通じて検証する。
元のページ
../index.html#24