道路交通環境下における知的障がい者の交通コミュニケーション能力の把握とその応用
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15 (3)道路交通環境下での課題事象 ここでは、先に表 2-2、表 2-3で整理した道路交通環境下での課題事象について、「そのとおり」から「そうではない」の5段階尺度で回答を得た結果について示す。なお、調査の際、項目の一部は回答者に配慮した表現に修正を加えている。 図 2-12は歩道、車道環境での課題を集計した結果である。まず対人的課題についてみると、「道路で車や自転車からクラクションやベルを鳴らされたときに自ら避ける行動がとれる」は「そのとおり」、「どちらかといえばそのとおり」といった肯定的回答が6割強と比較的多かったのに対して、同じ対人的課題である「歩道で相手がこちらに気づいていないときに自転車のベルを鳴らしたりするなど自分の存在を相手に知らせたりするような行動がとれる」は「そのとおり」、「どちらかといえばそのとおり」といった肯定的回答が3割程度と比較的少なかった。この結果から、知的障がい者の多くは、相手側からの意思疎通(注意)には対応できる場合があるが、自ら相手に意思疎通(注意)を試みることは難しいことがわかる。 次に交通空間的課題をみると、歩道の整備状況(幅員、有無、路面状態)に着目した項目が多かったが、路面状態の影響で転倒した被験者はやや多いものの、自動車や自転車との接触事故等まで経験した方は少ない。ただし、「怖い思いをしたことがある」といった回答は軒並み3割以上と少なくない。また交通量が多く、騒音が激しい空間では、3割弱程度の方が通過できなくなることも読み取れる。 次にシステム的課題をみると、通常と異なる信号制御や、通行経路の案内は、3割程度の方を混乱させ、目的地に到達できなくする可能性があることが窺える。 図 2-13は公共交通環境での課題を集計した結果である。まず対人的課題をみると、「切符をなくすなど困ったことが起きても駅員や運転手にうまく伝えることができない」や、「駅員や運転手に早口で立て続けに話しかけられると混乱してしまう」といった突発的事象に対して対応が難しい方や、例えその事象を相手に伝えようとしても、相手が知的障がい者との会話に慣れていない場合、さらに混乱を招いてしまうといった方が半数程度を占めることがわかる。 次に交通空間的課題をみると、特に「電車やバスの中で立ち続けることは難しい」といった方が3割程度を占めており比較的課題となっている。特に成長期の知的障がい者は健常者に比べ運動能力に課題が見られることが知られており14)、今後の分析で詳細に明らかにしていきたい。 次にシステム的課題をみると、「駅やバス停に設置されている時刻表や案内板を理解したり、確認したりすることは難しい」や「電車の切符を一人で購入できない」、「割引を受けるための療育手帳の提示が一人でできない」といった課題を有する方が5割程度と比較的多いことがわかった。
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