生活道路の安全性評価
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28 5.おわりに 本研究では、身近な生活空間で起こりうる交通事故と犯罪に着目し、過去に発生した危険事象の発生件数を基に危険度を定義して要因分析を行った。 小学校区を対象とした分析では、単位面積あたりの事故と犯罪の件数に高い相関関係がみられ、地区特性(道路延長、用途地域、施設数、人口、世帯数、児童数、外国人居住者)を媒介に重回帰分析を行った結果、有意となった説明変数(公共施設・商業施設・鉄道駅・工業系用途地域・県道)で最も影響している要因は「工業系用途地域面積」であった。 また若園小学校区の町丁目を対象としたミクロ的な分析においても、有意となった変数の中で最も影響している要因が「工場数」であることが確認された。 人が集積するエリアや幹線道路など、既往研究などで従来から指摘されている事故や犯罪が起こりうる要因と合わせて、工業系用途地域(工場数)が最も危険度に影響していた要因であることを明らかにできたことは、豊田市の地域特性を反映させた新たな知見である。また、防犯活動が盛んな若園自主防犯隊では、地域の工場と更に連携した防犯活動を計画しており、これまでの経験で培った防犯対策の視点を定量的に支持し、全市的な取組みへと発展できうる分析結果である。 今後、危険事象別の要因分析や危険事象が発生した生活道路の空間分析を詳細に行うためには、個人情報保護の関係で入手できなかった犯罪箇所の地点データを入手しなければならない。そのためには今回の分析結果を行政や警察署にフィードバックし、生活空間の安全確保に向けた取組みを共働で推進していくような連携づくりが重要となる。 <参考文献> 1) 木梨真知子・金利昭;防犯計画のための環境的要因分析に基づく犯罪発生空間の考察-茨城県日立市のひったくり犯罪をケーススタディとして-,土木計画学研究・論文集,Vol.25 no.2,2008.9 2) 長谷川直樹・鈴木博志;小学校区単位での自主防犯活動と犯罪発生状況-愛知県小牧市の事例研究-,日本建築学会技術報告集,Vol.16 no.33,pp.705-709,2010.6 3) 石川愛・鍋島美奈子・鈴木広隆;詳細事件情報を考慮したひったくり発生と道路空間特性との関係に関する研究-大阪市住宅系地区を対象として-,日本建築学会環境系論文集,Vol.74 no.635,pp.55-61,2009.1 4) 児玉克敏,森地茂,兵藤哲朗;交通事故統計の地図情報化と事故発生要因分析,土木学会年次学術講演会講演概要集第4部,Vol.47,pp.452-453,1992 5) 坂本邦宏,渡辺雅俊;GISを用いた道路特性分析による地区交通安全性の評価,土木学会年次学術講演会講演概要集,Vol.61,4-130,pp.257-258,2006
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