生活道路の安全性評価
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1 1.はじめに 1-1.研究の背景・目的 近年わが国では、身近な生活空間における交通事故や犯罪を抑制するため、まちづくりに係わる様々な主体が地域の住民と連携して安全確保に向けた施策を展開している。 交通事故や犯罪といった危険事象を抜本的に解決するためには、道路空間の改良などのハード対策が有用であるが、交通安全のハード対策は幹線道路や主要交差点が優先され、防犯においては道路空間や私有地の改良まで踏み込んだハード対策が講じにくいといった課題がある。さらに、立哨活動やパトロール、その他啓発活動といったソフト対策を自治体や警察、住民などが展開して地域の安全性向上に努めているが、個別に管理・運用されている。豊田市においても、平成24年に交通安全課と防災防犯課が統廃合して交通安全防犯課となったが、交通安全と防犯の垣根を越えた管理には至っておらず、啓発活動を含めた対策評価に課題を抱えている。 一方、学術分野においては、防犯対策として「自然監視性の確保(交通安全では見通しの良さ、夜間照明)」や「領域性の強化(交通安全では通過交通の排除)」などが指摘され、交通事故と犯罪の対策に共通する視点が報告されているが、交通事故や犯罪のどちらか一方の要因分析に留まっている例えば1)2)3)4)5)。 これらの現状を踏まえ本研究では、交通事故や犯罪といった危険事象が発生した空間的な要因を明らかにすることができれば、生活空間(生活道路)の安全性向上に向けて多くの対策メニューの中から重点的に対策を講じることが可能となり、安全・安心なまちづくりを効率的に運用できる有益な成果に繋がると考えた。 そこで本研究では、過去に発生した交通事故と犯罪の発生件数から危険度を算出し、道路交通指標や都市計画指標をもとに危険事象が起こりうる都市空間的な要因分析を行い、優先的に対策を施行する地域を特定するための視点(危険事象が発生する要因)を明らかにすることを目的とする。研究の流れを図 1-1に示しているが、防犯対策推進強化地区の指定や各種対策を実施する区域で統計的なデータが蓄積されている小学校区を対象としたマクロ的な要因分析と、特定の小学校区を対象としたミクロ的な要因分析を行う。 【交通事故】事故発生状況の把握交通安全対策の把握【犯罪】犯罪発生状況の把握防犯対策の把握小学校区を対象とした要因分析町丁目を対象とした要因分析 図 1-1 研究の流れ

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