生活道路におけるISAに関する研究
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24 2-4.まとめ 本研究で得られた知見を以下に示す。 1)DSDSの公道での適用に向けての課題 公道実験のDSDSの実施について、道路、交通管理者に対するヒアリング調査を実施したところ否定的な態度はなかった。ただし、DSDSで用いる提示内容については速度の直接提示は、関係機関との調整が困難となる可能性が高いことがわかった。 2)実験室環境におけるDSDSの効果 ①運転挙動への効果 何も無しの状態に比し、DSDSやパトランプ警告、標識の設置は広範囲に渡って平均走行速度を有意に低下させた。しかしながら、各デバイス間の平均速度は際立った差がみられなかった。一方で、DSDS(文字)は85パーセンタイル速度を提示位置より下流側で他のデバイスと比べて大きく低下させることがわかった。この結果は、DSDS(文字)は、特に大きく速度超過する運転者の速度抑制に効果を発揮する可能性を示唆するとともに、一般的な物理デバイスと異なり、デバイス通過後においても効果を発揮させる可能性があることを示した。 ②運転意識への効果 DSDS(文字)およびDSDS(速度)は他のデバイスに比べて提供されていることが気づきやすく、理解しやすいことがわかった。またDSDS(文字)は特に規制速度以下に抑えるという意識に与える効果が大きいことがわかった。一方で、設置に関する反対意見として景観や光害の影響が見られた。また、DSDS(文字)の内容については、絵などを加えるよりも文字のみによる評価が高かった。加えて、提供色については「速度OK」と表示される場合は緑、「速度オーバー」と表示される場合は赤や黄色が良いという結果になった。 ③速度変化の要因 DSDSの提示位置から下流側の40m区間における標識のみの平均速度とDSDSの平均速度の差を目的変数とする重回帰モデルを構築したところ、有意となったのは「せっかちな運転傾向」のみであり、当該傾向が強い場合、有意に速度を上昇させる可能性が高いことがわかった。また構築されたモデルでは、DSDS(文字)による速度変化に影響を及ぼす要因はすべて運転スタイルによるものであり、特定の属性に顕著な影響を与えるという傾向はみられなかった。裏を返せば、性別や年齢、事故、違反経験に依る事なくDSDS(文字)は一定の条件下で走行速度を抑制する可能性があることがわかった。ただし、当該モデルの精度は高くなく、今後改良の余地があることが示唆された。

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