周辺土地利用と生活道路の理想性能を考慮した面的速度抑制対策箇所の選定方法に関する研究
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1 1.背景と目的 平成25年の交通死亡事故死者数は4,373人で13年連続で減少傾向にある一方で、居住空間に近い狭隘道路である生活道路での占める割合が高まっている。平成23年3月に作成された第9次交通安全基本計画の中でも重視すべき対策の視点として掲げられているなど今後、生活道路をキーワードとした安全対策の重要性は極めて高い。生活道路は特に市街地において広域に広がっていることもあり、特に面的視点からの速度抑制を中心とする対策推進が有効とされる。欧州などでは都市全域で面的な生活道路の空間整備が行われていることもあり、市街地で発生する死亡事故はわが国に比べ極めて低い水準となっている。我が国も近年、警察庁においてゾーン30という面的な速度規制が推進されていくこととなったが、今後、安全な生活道路空間を実現していくための対策を可及的速やかに普及させるに資する研究成果を創出していくことの重要性は極めて高いと考える。本研究はその一つとして、面的速度抑制対策箇所の優先順位決定を支援する方法論に着目する。安全対策箇所の選定においては、交通事故の発生実態などが重視されることが多い。しかしながら、地域によっては交通事故の発生箇所データの入手が困難であること、さらに交通事故の発生原因と発生箇所の因果関係はデータ制約等もあり明瞭となることはほとんどないなどの課題を有している。特に延長当たりでみると発生件数が少ない生活道路では、特にその理論的根拠が不十分となる課題を抱えている。 本研究はこの課題に対応するべく、新たな視点として周辺土地利用状況と生活道路として必要とされる理想的性能からの乖離程度という視点から対策箇所を選定する方法論を提案するとともに、面的な速度抑制対策の導入すべき箇所の選定について豊田市をケーススタディとして実施し、当該手法の意義と適用範囲の限界を明らかにすることを目的とする。 本研究は以下のような内容で進める。 (1)生活道路の考え方 本研究で扱う生活道路の考え方について整理を行う。 (2)周辺土地利用状況からみた生活道路別重要度の算定指標の選定 豊田市をケーススタディ対象地域として、地理情報システム(GIS)を活用し、安全性の担保が求められる周辺土地利用施設との位置関係から生活道路の重要度を算定する指標を選定する。 (3)理想性能からみた生活道路別現況乖離度の算定指標の選定 生活道路の理想性能と対象地域の現況生活道路と対比し、その生活道路が理想性能から乖離しているか否かを判定する指標を選定する。判定の基準となる値や考え方については、

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