周辺土地利用と生活道路の理想性能を考慮した面的速度抑制対策箇所の選定方法に関する研究
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21 4.理想性能からみた生活道路別現況乖離度の算定指標の選定 生活道路に求められる基本性能は道路機能に照らし合わせると、主に以下の2点と考えられる。一つは、交通機能のうちのアクセス機能を担保する性能である。これは、安全に施設を発見し、出入できることに通じる。これを性能に置き換え考えると、走行速度を十分低くできるような道路構造を有するものと考えることができる。今一つは、空間機能のうち、生活環境空間を担保する性能である。これは、住民が安心して生活できる生活環境空間の達成に通じる。これを性能に置き換えると、交通事故が発生しづらいような道路構造を有するものと考えることができる。本研究では、上述の二つの性能を担保する道路構造を有するとき、その生活道路は理想性能であると考える。以下ではこれらの点を考慮した「性能」を既往研究から整理する。 4-1.既往研究の整理 まず、生活道路の走行速度に影響を与える要因について整理する。吉城ら1)、Do Duy Dinh, Hisashi Kubota2)の研究によれば、区間長、車道幅員、沿道施設密度が共通する生活道路における走行速度影響要因である。具体的には、長大な区間長、広幅員となる道路、閑散とした沿道はいずれの研究においても走行速度を上昇させることが明示されている。よって、これらの指標は、生活道路における走行速度抑制の性能を表現しうるものと考えられる。次に、生活道路の交通事故に影響を与える要因について整理する。生活道路ネットワークと交通事故の関係性を整理した極めて貴重な成果であるWesley Earl Marshalla, Norman W. Garrickb3)の研究によれば、接続ノード数、幹線道路の車線数、近隣の交差点密度が交通事故と密接な関係にある要因であるという。具体的には、接続ノード数の多さ、幹線道路の車線数の多さ、近隣の交差点密度の低さが交通事故の増加と結びついている。これらの指標は、生活道路における交通事故抑制の性能を表現しうるものと考えられる。以上の指標について、わが国において一般に入手可能な要因を用いて生活道路別の現況性能を算定する。 4-2.各要因の計算方法 4-2-1.生活道路の走行速度に影響を与える要因 上述のように生活道路の走行速度に影響を与える要因として、区間長、車道幅員、沿道施設密度が選定された。区間長および車道幅員は、ESRI社の提供するArcGISデータコレクション道路網データ(平成22年)を使用する。なお、ESRI社の提供する道路網データ

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