周辺土地利用と生活道路の理想性能を考慮した面的速度抑制対策箇所の選定方法に関する研究
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15 車の多い商業店舗の近く、高齢者の多いデイケアセンターや医療機関周辺、公園周辺、住宅の密集する地域においてゾーン30が導入されるべきと考えていることがわかる。 次に、管理者が考える安全性の担保されるべき地域について整理する。表3-1は我が国における主な生活道路のゾーン対策を示している。1972年のスクール・ゾーンを皮切りに、児童や高齢者といった交通弱者の安全性確保に着眼した対策が推進され、近年は歩行者、自転車の安全性を高める意図で進められている。ゾーン30はこれまでの対策と比べ、住民の同意が得られた場合柔軟に設定できる点、設定範囲の考え方がより具体的に示されている点などに特徴があるといえる。対象地区の土地利用的特徴をみると、小学校、住宅地域、商店街、市街地といったエリアでの設定がこれまで考慮されている。 次に、ゾーン対策の代表格であるゾーン30を例に取り、海外の事例について整理を試みる。ゾーン30は欧州諸国で1980年代から広く採用されている。例えば、オランダでは道路交通法(RVV)の中で1983年にゾーン30が明記され、1997年からは政府主導の「持続可能な安全性プログラム(Duurzaam Veilig)」の中でゾーン30が位置づけられたことでシェアードスペースなどと共に大きく推進されている10)11)。またドイツではブクステフーデでパイロットプロジェクトの一環として1983年11月に導入され、その後1980年代には、1988年のミュンヘンを始め多くのドイツの都市でゾーン30が導入されていった。対象とされる地区の土地利用的特徴について表3-2に示す。住居、商業店舗、学校などで占められることが多い。また特に通過交通への配慮として周辺に50km/h以上の幹線道路が整備されていることが求められたり、設定範囲を1km2以下とするなどの傾向もみられる。特にデンマークやオランダにおいては過度に交通が集まる箇所では設定を見送る傾向も見られる。 以上をまとめると次のようになる。まず、道路利用者が望む安全性の担保されるべき土地利用として、走行速度の抑制すべき生活道路の観点から既往研究成果をみたところ、主に歩行者、自転車の多い商業地、学校近辺、子供・高齢者の多い公園などが該当することがわかった。またこの傾向は、地域住民が望む安全性の担保されるべき土地利用特性と大きな相違はなかった。管理者が考える安全性の担保されるべき土地利用としては、市街地、居住地、商業地、学校などが該当するとともに、高齢者、子供などの交通弱者の安全性確保も重要な観点となっていることがわかった。 これらの結果を踏まえ、本研究では次のような方針で安心な土地利用の観点から指標を選定する。まず道路利用者と地域住民の視点は傾向が類似しているため、統合した解析を実施すればよいものと判断する。ここでは、双方ともに重要度が高かった「歩行者や自転車が多い商業店舗の集まる地域」、「通学路の多い幼稚園、保育園、小学校や中学校近くの地域」、「お年寄りが多い老人ホームやデイケアセンター近くの地域」、「住宅が密集する地域」、「体の弱い方の通行が多い病院の近くの地域」、「子供からお年寄りまでが集まる公園近くの地域」を表現する土地利用指標を設定する。次に、管理者の視点は、「市街地」、「居住地」、「商業地」、「学校」ならびに高齢者、子供の人口が多い地区を表現する土地利用指標を設定する。表3-3、3-4に対応する使用するデータを整理した。完全に合致するもので

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