平成25年度 中山間地域における高齢者モビリティ調査
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4 近年わが国では個人の長寿化が進んでおり、秋山2)は高齢者の日常生活や外出状況などを経年的に調査し、高齢者の自立度を明らかにしている。この調査は、全国の住民基本台帳から60歳以上の住民を無作為抽出(N=5,715)し、1987年から3年毎に訪問面接している。調査項目は、基本的日常生活動作として「風呂に入る」「短い距離を歩く」「階段を2・3段上がる」の3項目、手段的日常生活動作として「日用品を買物する」「電話をかける」「バスや電車に乗って外出する。」の6項目である。 20年の追跡調査の結果、65歳~90歳の高齢者のうち男性は、『自立して生活が送れる』10.9%、『手段的日常生活動作に援助が必要』70.1%、『基本的&手段的日常生活動作に援助が必要』19.0%、女性は『手段的日常生活動作に援助が必要』87.9%、『基本的&手段的日常生活動作に援助が必要』12.1%であった。本研究においても、これらの調査項目や定義を参考とし、自立期間(健康寿命)の延長を目指した中山間地域のモビリティ確保策の方向性を検討する。 また、日本交通政策研究会主催のシンポジウム『シニア社会の交通政策~高齢社会の時代のモビリティを考える~』に参加し、情報収集と意見交換を行った。本シンポジウムは、講師による基調講演とフロアを交えた討議の2部で構成されている。まず発起人である高田邦道 日本大学名誉教授から趣旨説明があり、その後、以下4名の講師による講演があった。以下、本研究と最も関連が強い③の講演内容と討議の要点を整理する。 ①『シニア世代の交通事故』:西田 氏((公財)交通事故総合分析センター) ②『シニア社会における交通環境づくり』:椎名 氏(警視庁交通規制課) ③『中山間地域の高齢者のための交通サービス』:藤原 教授(広島大学) ④『救急医療における高齢者外傷例の特徴』:守谷 准教授(日本大学医学部) • これまでの交通サービスは、通勤・通学などのまとまった需要かつ長距離移動に対する施策が中心となり、端末交通についてはあまり重要視されてこなかった。また交通は派生需要(病院や買物、通勤通学のための移動)であるが、中山間地域では移動そのものが目的(顔を合わせる外出機会)となっている現状でもあることから、今後は身近な移動に注力するシニア社会の交通政策として新たな領域が確立されるべきであることなどが議論された。 • 中山間地域における送迎(互助での移動)の成立可能性については、ある対象地域において世帯以外の送迎可能者も含めて地域全体で送迎可否をマッチングすると全ての人を送迎可能になるとの分析結果が報告された。しかし被送迎者(交通手段がなく送迎してもらう人)は、他世帯または世帯内の送迎者に何度も送迎をお願いすることを気兼ねてしまう傾向にある。(お金をとって欲しいとの意見が出されたとのこと。) また集団移転については、若年層は賛成する傾向にあるが、老人(年配者)は先祖代々の土地やお墓を守ること、貯金を葬儀資金に使いたい等の理由により移転には否定的であるとの報告であった。

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