交通事故の予防対策地点を効率的に抽出する手法に関する研究
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22.既往研究のレビュー 2-1.ヒヤリハット地点の把握に関する研究 ヒヤリハット調査を用いた交通安全に関する取り組みとして代表的なものに、ヒヤリハットマップの作成が挙げられ、それらの取り組みについては [2]にまとめられている。これらヒヤリハット調査の多くは、アンケート調査によって危険な体験をした地点を調査し、地図上に表示するものである。 近年はWebアンケートシステムを用いることによって、ヒヤリハット地点の座標の取得から状況の記述内容までを自動的にデータ化するシステムも可能となっており、結果もWeb上の地図に表示することが可能となっている。昨年度は研究所内のサーバーにこのようなWebアンケートシステムを構築し、豊田市内を対象としたヒヤリハット調査を行った [2]。 これらアンケートをベースとしたヒヤリハット調査は、市民などからヒヤリハット地点を収集することが可能である反面、1)調査協力者が集まりにくいこと、2)ヒヤリハット事象が偶発的な危険行動によるものなのか、道路構造など常に誰にでも感じられる危険事象なのか解釈が困難であること、3)回答結果がどの程度の危険性を持つものか解釈が難しいこと、などの課題がある。 アンケート以外のヒヤリハットデータの収集方法として、近年、プローブデータを用いた車両の危険挙動を把握する取り組みが行われている。その代表的なものとして、埼玉県がホンダのインターナビデータから急ブレーキ発生箇所データを特定し、原因分析と対策を実施している例 [3]が挙げられるが、このほかにも、例えば、畠中ら [4]は、加速度等のプローブデータ項目に関する車両挙動特性の解析と、都市内高速道路において収集したプローブデータを元に作成した走行危険箇所を示す地図(ヒヤリハットマップ)の受容性について検討をしている。また、山田ら [5]は、民間の自動車運送事業者のプローブデータを解析することで、急ブレーキなどが多く発生しているヒヤリハット地点を抽出し、交通安全対策への活用可能性を検証するために、抽出データと事故データを比較している。 プローブデータを用いたアプローチはアンケートに比較して、回答者の主観に基づくのではなく、実際の運転挙動を反映しているため、データを蓄積することによって偶発的な危険挙動を排除することができるというメリットが存在する。一方、現状ではプローブデータを収集、分析するためには膨大なコストと高度なデータ処理が必要である点と、データの作成者(カーナビメーカー)によってデータのフォーマットが異なっており、偏りのないデータを収集するという点において発展途上であると言える。また、車両の挙動を把握するという性質上、プローブデータは個人情報としての性格も併せ持っているため、入手自体が困難であるという点も指摘できる。

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