面的速度マネジメントの実現に関する総合研究
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82運転者が自主的にISA機器を購入するということは殆どありえなかったこと、ISAは特に地方道路で速度超過減少に効果的であったこと、総走行距離に対する速度超過走行距離の割合(Proportion of Distance driven Above the Speed)はISAの設置有無で有意に減少するなど効果を発揮した一方で、自由流速度や85%タイル速度にはあまり効果を発揮しなかったこと、旅行時間は増加したが、あまり大きなものではなかったこと、ISAを切ると、運転者の速度超過は設置前の基準に戻ってしまったことなどを明らかにしている。 イギリスで行われたKathryn Chorlton, et al.8)の実験では、強制型と自発型ISAに対する受け入れ(受容性)について、イギリスの11のセンサスエリアそれぞれからランダムで抽出された被験者を対象に表明選好アプローチによって検証している。その結果、少なくない割合の被験者が割引もしくはインセンティブのないISAについては反対の意向を示したこと、適切なインセンティブを与えた被験者はISAを欲しいと考えたり、強烈に設置したいと考えることなどを明らかにしている。 以上のように多少の差はあれど、いずれの研究もどのようなタイプのISAであっても速度超過を減少させる可能性が高いことを示している。その上で,ISAの普及に向けては,Oliver Carsten9)やJ.W.G.M. van der Pas, et al.10)が指摘するように、設置義務化など国のバックアップ体制が重要となること,デジタルマップの構築・更新に課題があること,社会的な受容性について不明瞭なところが多いこと,長期効果や広く普及した際の効果について検証が少ないこと,強制型・自発型ISAについては,誤作動による影響の検証が不足していることなどが課題となっている。 さらに,Emeli Adell et al.11)が行ったスペイン、ハンガリー、スウェーデンといった国家間の違いによる助言型、自発型ISAの効果や受容性の違いの検証結果をみると、特に作業負荷等に関わる受容性に関しては,同じ欧州の国同士であるにも関わらず国家間で意識が異なる可能性が否定できないことを示している。これは欧州諸国での研究成果をそのままわが国に適用するには、課題がある可能性を示唆している。さらに多くの研究が一般的な運転者を対象とした効果検証を主眼に置いている中で、本研究で着眼しているような高齢運転者における課題という視点から整理がなされているとはいえない。本研究はこのような視点からも一定の意義があるものといえよう。

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