面的速度マネジメントの実現に関する総合研究
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812-3 速度制御技術に関する現状 ISAの研究は1982年にスピードリミッターの研究から始まったといわれており,近年は欧州を中心としながらスウェーデン,フランス,デンマーク,アメリカ,イギリス,ベルギー,オランダ,オーストラリアなど世界各地で研究が進められている。ISAの速度介入方法としては,大きく以下の3種類がある。ひとつはISAシステムをエンジンやブレーキにリンクさせ自動車の走行速度を強制的に制御する強制型(Mandatory mode)ISAである。2つめは強制型と同様だが,ドライバーによる解除が可能な自発型(Voluntary mode)ISAである。そして3つめは制限速度情報を車内表示映像や音声で運転者に提供することにより運転者自らが速度を抑制することを狙う助言型(Advisory mode)ISAである。 ISAの効果は網羅的に検証されている。ベルギーのGhentで行われたSven Vlassenroot, et al.2)による実験では、34台の自動車および3台のバスがアクセルの踏み込み程度によってISAの解除が可能な自発型ISAであるアクティブアクセレレータペダルというISA機器を積み、速度変化、安全性、運転態度、挙動、運転者受容性という観点から評価を試みている。その結果として当該ISA機器の速度遵守における有効性を運転者が認識したこと、当該システムは低速の速度規制の場所ではさほど効果が認められなかったこと、当該システムは速度超過が少ないグループに対しては速度を上げさせ、速度超過が多いグループに対しては速度を低下させたこと、など多面的な検証結果を示している。 スウェーデンのBorlängeで行われたHenriette Wallén Warner, et al.3)の実験では、速度警告デバイスによるISAの2001~2003の約3年に渡る長期効果について検証を行った。その結果、ISAは規制速度を超過する時間の割合を大きく下げるとともに、平均速度も下げたものの、時間の経過とともにその効果は減少していったこと、規制速度に合わせることへの抵抗感が時間の経過とともに低下したことなどを明らかにしている。 2004~2006年にかけてイギリスで行われたFrank Lai, et al.4)の実験では自発型ISAの導入効果について検証している。その結果、ISAは速度超過を減少させるだけでなく、速度偏差をも減少させること、20mph、30mphや70mphなどのそもそも速度超過が多くなりやすいところでは、ISAの解除(override)も比較的多くなること、若年層や男性などそもその運転が荒くなるようなグループではISAのoverrideが多くなること、ISAは意図しない速度超過を大幅に削減する可能性があることを明らかにしている。 オーストラリアで行われたKristie L. Young, et al.5)の実験では,情報介入型と動的介入ISAの効果について、特に運転経験による挙動と受容の違いという視点からドライビングシミュレータを用いて検証している。結果として、情報介入型の方が動的介入型より走行速度を低下させ、特に最高速度を低下させたこと、経験の多いドライバーの方が経験の少ないドライバーより幾つかの道路形状において走行速度が低下したこと、行動にマイナスの影響を与えたり、作業負荷が高くなるなどの現象は確認できなかったことなどが報告されている。 2007~2009年にデンマークのNorth Jutlandで行われたHarry Lahrmann, et al.6),7)の実験では、153名を対象に情報提供型ISAの市場導入予測およびその効果を計測している。その結果、速度超過を減少させることで車両保険を30%減額するとインセンティブを与えたにも関わらず、

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