面的速度マネジメントの実現に関する総合研究
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802-2 高齢運転者の走行挙動、運転意識に関する一般的傾向 高齢運転者の走行挙動や運転意識についてはこれまで様々な形で検証されており、それを網羅的に整理した社団法人自動車技術会「高齢運転者適性ハンドブック」1)が詳しい。ここでは当該ハンドブックにまとめられる高齢運転者の走行挙動や運転意識について簡潔に紹介するとともに、それを踏まえたISAの導入意義について若干の考察を加える。 高齢者の身体的特性としては、動体視力の低下、視野の狭小、コントラスト感度の低下、暗順応の低下、グレアの増大、高音域を中心とする聴力低下、反応時間の「むら」の増加、複雑な作業を同時に行うときの速さと正確さの低下、衝撃耐性の低下、疲労回復力の低下などが挙げられる。これらが具体的にどのような挙動や事故・違反につながるかについてまとめているのが表2-2-1である。 次に心理的特性として、複雑な情報を同時に処理することが難しい、運転が自分本位になり相手に甘えがち、注意力の配分や集中力の低下などが挙げられる。これにより多くの情報処理が必要となる右折時の事故や相手の意図と自らの意図との相違により生じるサンキュー事故などが起きやすいといわれる。 また心理的特性にも関わる運転的特性として、過去の経験にとらわれる、意識と行動のミスマッチの増加、見込み違いを生む「慣れ」と「だろう運転」の増加、個人差の増大などが挙げられる。 以上のように、高齢運転者の走行挙動や運転意識は身体機能低下や心理的特性の傾向により非高齢者と異なる様相となる。とりわけ、運転時の初期の反応である認知部分に着眼するだけでも、情報の獲得において大きな課題があるだけでなく、情報が得られない場合には思い込みによって誤った判断や操作を行う可能性がある。この点においてISAは高齢運転者に対して、正確な情報を適宜提供することが可能であることから、低下している能力を補完する上でも非高齢者以上に重要な役割を担うことが十分想定されるといえよう。 表2-2-1 高齢者の運転に関わる機能と具体的行動内容、事故・違反形態1)より一部修正 機能 具体的行動内容 事故・違反形態 認知 視力 相手の車を見落とす 相手の速度を誤認する 信号・標識を見落とす 出会頭事故 聴力 エンジンの音が聞き取りにくい 緊急車両の接近が分からない 踏切警報音がわからない 一時不停止 判断 反応動作・速さと正確さ 判断・決定の情報処理に時間がかかる とっさの判断の遅れや誤りが生じる 複雑な情報処理が苦手である 信号無視 右折時の事故 優先通行妨害 操作 瞬間的対応ができない 認知から操作に至る時間が遅れる 意識に行動が伴わない ハンドルやブレーキの操作不適

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