面的速度マネジメントの実現に関する総合研究
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751-3-4 まとめ 本研究で得られた知見を以下のようにまとめる。 (1)ゾーン30の評価 全体的傾向として、ゾーン30を認知していた回答者は半数程度にすぎず、過半数がその存在を認知していなかった。その影響もあってかゾーン30整備後の安全面、景観面での居住地域の変化について好意的評価をしているのは1割程度にすぎず、ほとんどが「どちらともいえない」「わからない」などの中立的立場での回答となった。なお、周辺幹線道路への影響は、地域住民らが意識するような際立ったものはなかった。 各種対策の具体的効果について、通過抑制効果は速度抑制効果や注意喚起効果に比べ高くはないものの、特に通過抑制効果や速度抑制効果は各対策間の効果意識に有意な差がみられ、ハンプ+ポール、ハンプ、出入口カラー舗装の順に効果が高かった。また総合評価をみると、いずれの対策も8割程度の回答者がよい対策と回答しており、今回のゾーン30で導入された各種対策の評価はいずれも高いことがわかった。 また、個人属性からみると、年齢や性別の観点では、高齢者と女性に対して比較的高い効果がみられること、居住地と通過頻度については、ゾーンの認知のみに影響をあたえていること、事故歴と違反歴の観点では、事故歴ありと違反歴なしに対して比較的高い効果がみられることがわかった。また特に出入口カラー舗装は、個人属性により効果の差が生じないことがわかった。 (2)ゾーン30対策推進やその方法に対する意見 現在のゾーン30における更なる交通安全対策導入・推進の賛否について推進に賛成する意見が7割程度と大半を占めることがわかった。また、ゾーン30等交通安全対策を円滑に推進するための地域住民の関わり方については、できるだけ早い段階から対策に対して意見を述べることが円滑な対策推進において重要であると認識していることが明らかとなった。 (3)都心の生活道路空間の理想像 都心の生活道路空間の理想像について、地域住民はある程度の自動車の走行は認めた歩行者優先空間と景観に優れた空間を都心道路に求める傾向があることがわかった。 (4)課題 以上のように、今回豊田市で導入されたゾーン30は、その認知面で大きな課題があった一方で、導入された各種対策は、個人属性間で差があるものの、一定の好意的評価が得られていた。 高齢者、女性に対して特に高い効果が期待できるという点は、これから進展する高齢社会、特に高齢の女性運転免許保有者の増加を踏まえれば、対策推進意義の高さがあるものと推察される。また課題として考えられるのが、ゾーン30以外に居住する運転者やゾーン30の通過頻度が少ない運転者に対しては、ゾーンの認知を高める工夫をする必要がある点、特に課題のある速度違反歴のある運転者に対して、今回のハンプは速度抑制意識に与える効果が比較的低いことに対する

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