面的速度マネジメントの実現に関する総合研究
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111高齢層の心的負荷を軽減させる可能性が示唆された。一方で、これら以外のほとんどのシナリオにおいて、年齢群によって若干の違いはみられるものの、幹線・生活道路いずれにおいても特徴的傾向は見受けられないことが分かった。 意識調査の分析結果より,強制型ISAにおいては,道路構造で年齢群による評価に特徴的傾向がみられ,幹線道路においては若年群が,生活道路においては高齢群の評価が高くなる,すなわち心的負荷が少ないことがわかった。また,映像・音声型ISAにおいては,年齢群による評価に特徴的傾向がみられ,高齢群の評価が高くなる,すなわち心的負荷が少なくなることがわかり,その傾向は生活道路でより顕著となることがわかった。 (5) 車両側からの速度制御が高齢運転者の運転意識に与える影響 ISAの機能に対する反応と評価は,映像・音声型ISAの評価が高く,その傾向は高齢群においては顕著であることから,ISAの機能は特に高齢群においてより高く評価される可能性があることを明らかにすることができた。またISAの市場価値の計測は,強制型ISAに比べて映像・音声型ISAの搭載を希望する傾向が強いものの,有料か無料かという視点や年齢群によって傾向がみられなかったことから,機能としての魅力はあるものの,市場価値はそれほど期待できない可能性があることが示唆された。最後に,ISAの社会的普及における運転者側からの受容性は,全体としていずれのISAにおいても普及させたほうが良いと判断されているものの,特に映像・音声型ISAでは,年齢群によって差がみられないことから,一般性が高いことが窺えた。 今回の実験では、眼球運動も同時に捉えており、強制介入による自らの走行速度の確認行動にどの程度の変化があったのかなどの分析を行い、ISA介入による確認行動の変化やそれが安全運転に及ぼす影響についても把握したい。また、今回の実験はISA介入直後の短期的な効果計測を行ったものであり、今後はフィールド実験等を行い、長期的な視点からの評価を行いたい。 参考文献 1)社団法人自動車技術会(2005),高齢者運転適性ハンドブック,社団法人自動車技術会中部支部高齢者運転適性研究委員会, 6-8. 2)Sven Vlassenroot, Steven Broekx, Johan De Mol, Luc Int Panis, Tom Brijs, Greet Wets, (2007), Driving with intelligent speed adaptation:Final results of the Belgian ISA-trial, Transportation Research Part A, 41, 267-279. 3)Henriette Wallén Warner ,Lars Åberg(2008), The long-term effects of an ISA speed-warning device on drivers’ speeding behavior, Transportation Research Part F, 11, 2, 96-107. 4)Frank Lai, Oliver Carsten, (2012), What benefit does Intelligent Speed Adaptation deliver: A close examination of its effect on vehicle speeds, Accident Analysis & Prevention, 48, 4-9. 5)Kristie L. Young, Michael A. Regan, Thomas J. Triggs , Keren Jontof-Hutter, Stuart Newstead, (2010), Intelligent speed adaptation—Effects and acceptance by young inexperienced drivers, Accident Analysis & Prevention, 42, 3, 935-943.
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