面的速度マネジメントの実現に関する総合研究
112/137

1102-8 おわりに 本研究の成果について以下のようにまとめる。 (1) 高齢運転者の走行挙動、運転意識に関する一般的傾向 既往研究を整理することにより,高齢運転者の走行挙動や運転意識は身体機能低下や心理的特性の傾向により非高齢者と異なる様相となることを明らかにした。とりわけ、運転時の初期の反応である認知部分に着眼するだけでも、情報の獲得において大きな課題があるだけでなく、情報が得られない場合には思い込みによって誤った判断や操作を行う可能性があり,この点においてISAは高齢運転者に対して、正確な情報を適宜提供することが可能であることから、低下している能力を補完する上でも非高齢者以上に重要な役割を担うことが十分想定されることが示唆された。 (2) 速度制御技術に関する現状 既往研究の整理を通じて,どのようなタイプのISAであっても速度超過を減少させる可能性が高いことがわかった。ただし,ISAの普及に向けては,設置義務化など国のバックアップ体制が重要となること,デジタルマップの構築・更新に課題があること,社会的な受容性について不明瞭なところが多いこと,長期効果や広く普及した際の効果について検証が少ないこと,強制型・自発型ISAについては,誤作動による影響の検証が不足していることなどが課題となっていることが整理できた。また,欧州での研究事例により欧州諸国での研究成果をそのままわが国に適用するには課題がある可能性が示唆されること,さらに多くの研究が一般的な運転者を対象とした効果検証を主眼に置いている中で、本研究で着眼しているような高齢運転者における課題という視点から整理がなされているとはいえないことから,本研究は一定の意義があることなどが整理できた。 (3) 車両側からの速度制御が高齢運転者の走行挙動に与える影響 DS実験の分析結果より、比較的道路幅員が狭い生活①②のような生活道路では、最高速度の標識がない空間に比べ、最高速度の標識がある空間は、平均速度やアクセルストロークを有意に低下させることが確認された。以上より、最高速度を適切に認知させることは年齢群に大きな差の生じていた走行速度の均一化を図る上で重要な意味を持つことが確認された。また、車線幅員が狭い生活②のような生活道路では、ISAの情報提供型介入により、標識ありに比べ有意に平均速度を低下させるとともに、アクセルストロークを低下させる傾向があることが確認された。一方で、生活②以外の空間では、強制型ISA・情報型ISAのいずれの形式においても走行速度の変化に大きな差はみられないものの、速度低下の効果が期待できることが分かった。 (4) 車両側からの速度制御が高齢運転者の心的負担に与える影響 DS実験の分析結果より、ISAの介入のうち強制介入において、高齢群の場合、幹線・生活道路いずれにおいても有意に瞳孔径が縮小する傾向がわかる。このように、強制型ISAの介入は特に

元のページ  ../index.html#112

このブックを見る