面的速度マネジメントの導入効果に関する研究
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1 序章 はじめに 埼玉県川口市1)をはじめ、面的速度マネジメントの整備が進みつつある。一方で、今後さらに加速度的に展開していくにあたっては、その導入効果について明確にしていくとともに、その実効性が担保できる対策を複合的に実施していくことが求められると考える。 導入効果を明確化していくという面では一般に費用便益分析による評価が考えられる。一方、面的速度マネジメントは狭域エリアから順次導入が進むことが想定されること、安全、特に安心といった一般的に便益計測が難しい指標の重要性が高いことなどから、量的・指標選択の視点から見て一般的な経済指標により効果計測を実施しその意義を見出していくことが難しいと考えられる。この点について、ミクロ的な視点から影響評価が可能な手法を検討することが重要であるといえる。 他方、実効性担保の面では、わが国は規制速度と実勢速度の乖離が深刻な課題となっている点を考慮する必要がある。面的速度マネジメントを実現していくためには、これについて改善に向けた対策の推進が必要不可欠である。規制速度と実勢速度の乖離の解消には、速度を抑制しなければならないと住民が意識する環境を構築していくことの重要性を指摘できる。すなわち、住民がそこでは速度を抑制して走行しなければならないと意識する環境を作り出さないと規制速度を導入しても適正な効果が発揮されない。ここで、住民が自ら「速度を抑制しなければならない」と意識する走行環境をどのように構築すべきかについては、大きく3つの視点があると考える。ひとつは古典的かつ最も重要な空間側からのアプローチである。近年、特に生活道路における空間構成についていくつかの研究成果が挙がっており、今後はこのような空間を具体的に推進していくための課題解消に向けた取り組みが求められていくであろう。2つ目は人側からのアプローチである。これは沿道から運転者に交通安全を呼びかける立哨活動などがひとつの例として挙げられる。近年では、スピードガンを用いて車両速度を計測し、その速度を運転者に提示して速度抑制を図るという取り組みもみられる。3つ目は、車両側からのアプローチである。2000年代以降、欧州を中心にISA(Intelligent Speed Adaptation)と呼ばれる技術の導入が検討されており、多くの研究成果もみられる。ISAは車両側から規制速度に合致する速度に誘導するものである。わが国でも車両の開発が試みられている例もあり、今後の発展が期待される分野である。 ところで、後者の2つについては、主に以下のような課題が内包されていると考える。ひとつは方法に対する運転者の理解である。いずれの方策も中ば強制的に速度を抑制しようとするものであるため、「運転者」の理解がないと成り立たない方法である。次に対策の副作用である。新たな技術や取り組みであるため、速度抑制効果はあったとしても、副作用として運転者の操作ミスのような負の影響が無いかの確認が必要となる。特に致命的な副作用が発生した場合、いくら効果が明示されたとしても、対策そのものの推進は極めて難しくなる。3つ目は対策そのものの普及である。車両側の場合は車載器の普及が進まないと社会全体での効果がみえづらいし、人側の場合は住民や行政、警察など関係主体の意識醸成がないと成り立たないといった課題がある。 よって、本研究は大きく以下の2つの視点から研究を進める。まず、面的速度マネジメントの導入に関連する評価指標の事例収集を行い、その指標をベースにシミュレーションによる効果予測を実施することを試み、その結果について報告する。次に、人側および車両側からの速度制御
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