鉄道(レールバス)廃線前後の行動・意識の変化
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29 全体では、車依存度の高さもあり、いずれの地区も鉄道(レールバス)廃線による影響を大きく感じてはいない住民が多いと想定したが、概ね予想どおりであったと感じた。その理由としては、石野地区では鉄道(レールバス)の廃線後に公共交通の利用者の減少もややあったが、利用者の多くがバスへと移っており、今のところ大きな影響はないと思われる。ただ、今後、住民が高齢化することが予想され、特に、石野地区や足助地区の住民は将来的に移動の手段として公共交通への期待や不安は大きいと感じた。 アンケートのもう一つの大きなポイントである「鉄道とバスのイメージ」の比較検証については、一般的に鉄道に対するイメージはバスに対するものより良いイメージを抱いているいと考えられているという想定(仮説)を検証するために、3地区の住民の方にいただいたアンケートの回答を分析してみた。その結果をまとめると以下のとおりである。 全般的に見ると、鉄道の評価が高く、特に「安全性・快適性」や、「環境面」での評価が高くなっている。ただ、今回のアンケート結果からは「通院」に対するイメージは鉄道との遜色がなく、現状のバスの運行が病院へ直通で行けるという点がバスの評価を高めることに影響していると考えられる。石野地区では鉄道の「車両への愛着」が強くあるにもかかわらずバスへの全般的な評価が高いが、これは今まで運行していた鉄道が廃線となった残念な思いの表れと、現実的な利用価値(利便性)が高いバスの評価のそれぞれの思いが現れていると感じた。足助地区ではもともと鉄道が無いく、鉄道に接する機会が少ないためか、「車両への愛着」が3地区の中で唯一標準を下回った(鉄道全般の評価も3地区の中で一番低い)と考えられる。また、「バスが街を活気づけているか」という点については、バスの評価が同じ(それぞれ3.1点)であった石野地区と足助地区ではあるが、今まであった鉄道が廃線でなくなったということが大きく影響しているためか石野地区で鉄道の評価が3.6点と大きく足助地区(3.1点)を上回った結果となっている。この結果から推察すると、一般的に良いイメージのある鉄道が地区内にあることで街に活気があると感じている思いを持ちながら、地区の現状から考えるとバスの運行にとって変わったことの現実を受け入れなくてはならないと感じていると考えられる。 そして、鉄道廃線後の地区の変化については、全体的には全ての項目で鉄道廃止後の評価が標準以下となっており、鉄道の運行を継続できなくなった地区の衰退や環境の悪化を感じている人が多いと考えられる。商店の衰退はもとより、バス運行が交通の流れを妨げている(バス停で停車する)ことを理由に上げている人もいた。まだ鉄道が残っている(終着駅となった)猿投地区とバスの運行が直通で豊田市内まで行けるようになった足助地区においては石野地区に比べると鉄道(レールバス)の廃線後の評価が高く(ただし3地区とも評価は標準点以下)となっている。 最後の所感としては、鉄道の評価は一般的にはバスより高いものの、地区の状況(歴史や現状)の違いにより鉄道とバスに対する意識が異なることを感じた。各地区の全般的な思いとしては、鉄道に固執することではなく、バスであっても便利な公共交通として運行されれば利用意志があるということも感じられた。そのためには、バスの運行をうまくPRすることや、できる限りニーズに合わせたサービス(乗り継ぎのよさも含めたダイヤ設定、待合所や待機所などの設備の整備など)をすることが今後必要となってくると感じた。

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