通勤における自転車利用のあり方に関する研究
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2-2. 既往研究の整理 自転車通勤に関する既往研究は、自動車からの転換要因に関する研究6)や地形が自転車移動に及ぼす影響に関する研究7)など様々な視点で行われている。そのなかで、本研究で対象としている自転車通勤促進策に関連している既往研究2編について内容を整理する。 留守ら6)は、企業内での自転車利用促進策の実施を想定した自動車から自転車への通勤交通手段転換について、自転車通勤に対する金銭的インセンティブやシャワー室の整備を組み込んだ手段選択モデルを推定し、施策の効果を明らかにしている。今後の課題としては、雨天時や季節の要因が手段転換に与える影響の把握や、自転車通勤への意識転換と実際の手段転換との関係性の分析などを挙げている。松村8)は、マイカー通勤の削減を目的に通勤手当の支給制度を変更した名古屋市を対象として、従業員の意識と行動変容の規定因についての分析を行っている。名古屋市で実施された通勤手当の改変が成功した要因のひとつとして、「アメ(自転車通勤手当の増額)とムチ(自動車通勤手当の減額)」をパッケージで行なったことを挙げ、従業員の環境に対する態度と心理的要因が改変合意に関与していたと結論付けている。 2-3. 研究の位置づけ 自転車通勤促進策の事例や既往研究をみると、事業所側がトップダウンで施策を展開していく場合においても「アメとムチ」を上手く使い分けており、自転車通勤の成功のポイントとしては、通勤環境をよりよくするため、事業所側と従業員側の合意を如何にして図っていくかが重要であると考えられる。 そこで本研究では、エコ通勤施策の一つである自転車通勤を促進する上での課題として、2-1節で挙げた『費用面』と『設備面』、さらに『その他(雨天時)』の3つを設定し、それぞれの課題への対応策について、実際に通勤を行う従業員と通勤を管理する事業所双方の受容性などの調査を「豊田市エコ通勤をすすめる会」の会員事業所を対象として行い、自転車通勤を促進するための方策と現状の課題について明らかにする。 また、事業所独自で行うエコ通勤への取り組みに活用できるように本研究の成果をフィードバックし、今後の促進策の施行過程(合意形成)や自転車通勤への転換意識などをパネル調査していきながらマイカーから自転車通勤への転換要因を詳細に分析できる研究へと発展させたいと考えている。研究の位置づけを図 2-3-1に示す。

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