地域公共交通に関する研究-2
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- 3 - (2) 運行契約の類型整理 寺田の論説(上述のレビュー①)によると、「バス運行にかかる公民役割分担の基本的な枠組みについては、運行の費用がどれだけかかり,どう変化するかとういう費用リスク,ならびに運賃収入がどれだけ発生し,それがどう変化するかという収入リスクとに分けて考えることができる」とし、バス事業では「収入リスクのほうが費用リスクよりも大きいのが一般的な姿」であることを考慮して、公民のリスク分担によるコミュニティバスの分類を行っている。 この寺田の分類に基づき、類型名称を付し、特徴と具体的事例について当方の見解を交えながら整理したものを表2-1に示す。 表2-1 自治体と運行事業者とのリスク分担の分類と特徴 類 型 (※寺田の分類に一部独自に名称を付した) リスク分担 特徴と具体的事例 (寺田の論述内容を整理し当方の見解を追記) 費用リスク 収入リスク (1) 完全欠損補助型 自治体 自治体 ・ 自治体が両リスクを完全に負担する。 ・ 事業者の申告による費用と収入の差額を、後に自治体が全額補填する。 ・ 全国の半数以上の事例がこれに該当。 ・ ダイヤ設定上の工夫など、運行内容改善の事業者努力の動機が削がれる危険性あり。 ・ 当初予算の補填額を大きく超えた赤字への対応が課題。→ 事業者とのトラブル発生事例も。 (2) 部分的欠損補助型 事業者 自治体 事業者 ・ 費用リスクは事業者が負担し、収入リスクは自治体と事業者がシェアする。 ・ 自治体の補助限度額を設定し契約。この額をプロポーザルで決めるケースもあり。(東京都港区、台東区、渋谷区、浦安市、日野市など) ・ 葛飾区では「経費の半額」または「収入と同額」の少ない方の額を補助。 ・ 豊田市基幹バスなど、さまざまな工夫が凝らされているのはこの類型。 (3) リスク分離型 事業者 自治体 ・ 費用リスクは事業者が負担し、収入リスクは自治体が全て負担する。 ・ プロポーザルや競争入札で事業者選定。 ・ 実質的には完全欠損補助に近い状態と言える。 (4) 事業者負担型 事業者 事業者 ・ 両リスクとも原則として事業者が負担。 ・ 自治体は初期費用(走行環境整備)や広報費用など、限定的に負担。 ・ 主に首都圏で見られる。(埼玉県三郷市など) (5) 民営自主運行型 事業者 事業者 ・ 事業者の営業路線だが、自治体が住民協議や許可上の調整を行う。 ・ 事業者としてはマーケティングやイメージのためにコミュニティバスの名称使用。 ・ 自治体としては地域公共交通政策に位置付けることから、関与している。 ・ 主に首都圏で見られる事例。 これらのうち「(2) 部分的欠損補助型」は多くの自治体バスで見うけられる型であると考えられる。本研究では、これにあてはまる豊田市の実態について、以下で整理する。

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