地域公共交通に関する研究-2
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- 2 - 含めて、推進している。著者らは、赤字路線の赤字額を全額市が補填するという補助金交付方法に対して、バス運行事業者の経営努力が損なわれ(インセンティブが存在しない)、村結果、行政の支出が嵩んでいるという問題意識を持っている。これは、本研究の問題意識と同一である。著者らは、運行事業者との契約において、そのメカニズムを適切にデザインすべきであると主張し、バス事業者が赤字削減努力をするインセンティブが働くような赤字補填額を算出する数理モデルを構築している。 ④ 中山偉人,中川大,松中亮治,大庭哲治:運行事業者と費用負担方式の違いに着目したコミュニティバスの運行費用に関する研究,土木計画学研究・講演集,Vol.44,2011. コミュニティバスはそもそも採算性を求めることができないような事例が大多数であるが、その委託方式や赤字補填の方式は様々である。運行委託費や補助金の積算には一般的な方法が定まっていない現状で、今後のコミュニティバス導入において、どのような方式での運営が望ましいのか、京都府内においてコミュニティバス運行を実施している21自治体に調査したアンケートおよびヒアリング結果を用いて、費用負担方式や運行事業者の違いを把握するとともに、その運行費用との関係を示している。その結果、「距離単価方式」による費用積算の場合、地方都市では総費用が適正額よりも高く見積もられる傾向にあることを述べている。また、運行事業者の違いにより、同程度の収入を得るために必要なコストは「協議会」「新規事業者」「路線バス事業者」の順に高値になっている、としている。 ⑤ 中村智:コミュニティバス事業の内部化・外部化はいかに決定されるのか-インセンティブ・システム・アプローチによる解明-,中央大学商学部卒業論文,2011. コミュニティバスの運行事業において、自治体自らが運行する場合すなわち「内部化」している場合と、運行を民営バス会社等に委託する場合すなわち「外部化」されている場合について、その運営形態を選択する決定要因を、インセンティブ・システム・アプローチを援用し明らかにしている。インセンティブ・システム・アプローチとは、「成果が数値化しやすくインセンティブが引き出しやすい」ものは外部に委託し、反するものは内部で管理するという考え方であり、著者は、これによって引き出される仮説のいくつかはコミュニティバス運営形態の意志決定において支持されていることを自治体アンケート調査結果から導いている。 ⑥ 国土交通省中部運輸局「地域公共交通コーディネーター会議」資料(コーディネーターの意見),2012. 国土交通省中部運輸局が主催する「地域公共交通コーディネーター会議」における討議でも、本研究の参考となる意見が多数出されている。平成24年年3月1日に開催された同会議では、「交通計画や運行計画、会議運営方法や利用促進方法、住民、利用者、自治体、事業者の意識について、ここ5年間で何が変わったのか?」というテーマでの討議が行われたが、そこで「自治体の意識、姿勢は大きく変わったが、運行事業者の姿勢、努力が望まれる」という類の意見がいくつか出された。
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