地域公共交通に関する研究-2
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- 6 - 平成22年度は2路線が該当しており、路線Aは約470万円のプラスが、路線Iは約610万円のマイナスが差額として発生しており、協議の結果、プラスの場合はこの半額が運行事業者に支払われ、マイナスの場合は運行事業者がこの半額を市に支払った。 平成23年度は国の補助金との整合を図るために、半期で決算を行っている。その結果、プラスとなったバスが6路線、マイナスは3路線であった。 これら9路線のうち、路線Iは平成22年度、23年度ともに大幅なマイナスとなっている。これは交通事業者にとって大きな損失であり、この仕組みによって課せられたリスクが顕著に現れた事例である。この件に関して、豊田市交通政策課へのヒアリング調査から得られた情報を整理すると、以下のような経緯・理由であることが明らかになった。 • 事業者から提出された平成22年度の運行実績報告に基づき、市と事業者で協議が行われた。収入実績が当初の見積額よりも大幅に少ない状況について、運行事業者はその理由を明確に提示することができなかったため、協定に基づき、マイナス分を折半し負担することとなった。 • 平成23年度前期についても、同様に収入が少なかったため、市側は調査を行った。 • 路線Iの平成22年度の利用者数を前年度と比較すると、利用者数は6%の減少であるのに対して、収入の内訳の変化を見ると、現金収入が47%、回数券収入が69%、定期券収入が13%、売上総計としては35%の減少であった。 • 同路線は平成19年から運行が開始されているが、21年度までは現在とは違う事業者が運行を受託していた。つまり、平成22年度にインセンティブ契約を適用すると同時に、受託事業者が変更している。 • 一方、上述のように特に減少幅が大きい回数券の販売は、運行事業者が独自に販売網を確保していく仕組みになっており、自社が受託した路線の対象地域内において、コンビニエンスストアや郵便局で自社発行の回数券の販売を依頼している。 • 路線Iの周辺には、前事業者が以前から受託運行している路線が他に2路線あり、この地域は全事業者が依頼した券売所が多数存在していた。 • 以上のことから、路線Iに乗車するために同地域で購入された回数券の売上げは、前事業者の売上げとして計上されていた。 • この実態を受け、差額算出に用いる回数券収入の計上においては「その路線で使用された回数券枚数から算出」した「みなし収入」を適用することとし、平成23年度上半期の路線Iに適用した。 • しかしながら、依然として大幅なマイナス値となっている。

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