障がい者の移動に関する研究
8/65

4 2.障がい者PT調査における自由記入欄の分析 (1)自由記述欄の分析手法についてのレビュー テキスト型データの計量的分析については、樋口1)によると、古くから取り組まれており、その対象として新聞記事が用いられている。アメリカではこうした研究が1930年代から始まっている。テキスト型データの計量的分析(テキストマイニング)のアプローチには、大きく2つのアプローチがあり、1つはDictionary-basedアプローチとして、分類基準を作成し分析者の持つ理念や問題意識を分類することが目指されている。もう一つのアプローチとして、Correlationalアプローチという方法がある。現在テキストマイニングと呼ばれるこの方法は、言葉の切り出しをデータから自動的に行い、これを用いて因子分析、クラスター分析などの多変量解析を行う方法である。 都市・土木などの分野においても様々な方法で自由記述やインタビューのテキストの分析が試みられている。事業の評価や事業の問題点を探る目的で実施されるもの6),7)、景観などの現状の事象の評価を行うものなど3)がある。行政などに対する不満の状況を把握する方法としてアンケート自由記述からニーズや不満を抽出する方法がある7)。文献7)では、自由記述回答を定量的に分析する手法の確立を目指し、表現の強さ(すごく悪いなどの言葉ですごくにあたる部分)、重要度、満足度の関係が視覚化されている。また問題点を抽出することが目的の場合にはプリコードデータよりも自由記述データを使った方が良いということも示されている。また、鷹尾ら2)は、自由回答文から交通経路の取捨選択方略の抽出を試みている。さらに、大塚ら3)による都市・景観イメージに関する分析では、テキストマイニングの手法を使用し、アンケート結果得られた想起される言葉の関係性を示し分析を行っている。障がい者を対象とした研究としては、障がい者基本計画のニーズを探る試みとしてKJ法との併用の可能性を探る研究9)が行われている。また、障がい者自身の意識の分析を試みる方法として自由記述を数量化する研究10)が取り組まれている。障がい者の意識に関する研究は様々に取り組まれている。 こうした様々な自由記述などのテキスト型データの計量的分析は、これまで明らかとなっていない障がい者の交通特性上の課題を定量的に見出す方法としても有効であると考えられる。よって、本研究では自由記述の分析を通じて、一般に想定しえないような移動上の課題を抽出することを目的とする。

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る