障がい者の移動に関する研究
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474.高齢障がい者を対象とした支援施策のあり方に関する研究 表4-1には厚生労働省が調査した年齢階級別にみた身体障がい者数を示している。ここに示されるように、人口に占める障がい者の割合は、若年層より圧倒的に高齢層が高くなっている。また近年においても、最も障がい者が多い70歳以上の障がい者の増加が顕著であり、社会問題になりつつある高齢社会問題の一側面となりつつあることを呈している。障がい者の高齢化に伴う、交通基盤上の問題はこれまであまり議論されている例がなく、少子高齢化の進展や高齢者の移動手段に関する制約により、相対的に多くなる高齢障がい者を対象とした支援施策のあり方は重要だと考えられる。ここではこうした状況における課題の整理と支援方策の在り方を検討する。 表4-1 年齢階級別にみた身体障がい者数1) 総 数 年 齢 階 級 (歳) 18・19 20~29 30~39 40~49 50~59 60~64 65~69 70~ 不詳 平成18年 3,483 12 65 114 182 470 394 436 1,775 35 (100.0) (0.3) (1.9) (3.3) (5.2) (13.5) (11.3) (12.5) (51.0) (1.0) 平成13年 3,245 11 70 93 213 468 363 522 1,482 22 (100.0) (0.3) (2.2) (2.9) (6.6) (14.4) (11.2) (16.1) (45.7) (0.7) 対前回比(%) 107.3 109.1 92.9 122.6 85.4 100.4 108.5 83.5 119.8 159.1 (1)既往研究の整理 高齢者と障がい者の身体、認知・判断能力などの視点から研究成果、報告等をレビューし、その特徴を明らかにする。 高齢者の特徴については、自動車技術会編「高齢者運転適性ハンドブック」などが詳しい。ここでは、視覚機能、聴覚機能、触覚機能、判断機能、身体・運動機能、などから若年層と高齢層の違いについて整理しており、いずれの機能も高齢層は若年層に比べて明らかに低下することが報告されている。障がいの有無に関わらず、交通行動を行う際の高齢者の能力は低いことは明白である。 障がい者の特徴については、障害によって様々であることが様々な研究で明らかにされている。よって、分析にあたっては特定の障害に絞って考えることが望ましいと考えられるとともに、高齢化によって他の障害より移動に際して甚大な影響を受けると想定される障害に特化することが重要と考えられる。 図4-1は先行研究から抜粋した障がい者の年齢を示している。多くの障がいでは、60歳代以上の高齢層が過半数を占めているのに対して、知的および精神障がいでは、高齢層(60歳代以上)の割合が低くなっている。よって本研究の対象は高齢障がい者であるため、ここでは、知的、精神障がいを持つ方を除いた身体障がい者を対象とした分析を行うこととする。また、特にその身体的特徴により交通行動時に困難を伴うと想定される障がいに着目することが妥当であると考えられる。よって、ここでは、視覚、聴覚、下肢不自由、体幹の4つの障がいに着眼し、それぞれにおける交通行動特性について整理する。

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