障がい者の移動に関する研究
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1 1.背景と目的 本研究は、障がい者の移動実態を踏まえ、障がい者をはじめとする交通弱者の移動支援の方向性を探ることを最終的な目的としている。これまで三カ年にわたり、研究を進めてきてた。平成21年度は障がい者を対象とした人の動き調査(以下、障がい者PT調査)の分析を通じて、障がい者の移動実態を明かにした。成果としては、障がい者の移動について「自動車の利用が多い(公共交通の利用は少ない)」「豊田市内でも地域差がある」「介助者の存在が大きく影響する」などの傾向があることを明らかにした。 平成22年度は障がい者の移動について、地理的状況からみた特徴の整理と移動に関する支援制度の実態把握を行った。 本年度は大きく以下の2つの目標で研究を進める。 1)障がい者PT調査の自由記入欄等の分析を深め、移動に関する課題を明らかにする。 2)課題が大きい対象(知的精神障がい者、高齢障がい者)に絞り込んだ研究を行う。 具体的には以下のような流れで研究を進める。なお、本研究は各章それぞれが独立したものとなっており、まとめについては各章の末尾に記述している。 (1)障がい者PT調査における自由記入欄の分析 障がい者の移動に関するアンケート調査においては、これまで、各選択項目を中心にアンケート結果の集計を行ってきた。本年度は、アンケート調査の自由記入欄の記述内容について、詳細な分析を試みる。本アンケート調査においては、自由記述ができる箇所が設定されており、これらについて詳細な分析を行う。これにより、障がい者の潜在的な移動に対する意識を明らかにすることを目指す。主な内容は以下のとおりである。 1)自由記述欄の分析手法についてのレビュー これまでアンケート調査の自由記述欄については様々な手法により分析がされている。本研究において障がい者の移動に関する意識を探り可覚化していくためにどのような手法がふさわしいか既往論文のレビューを実施する。 2)障がい者にとっての移動の位置づけの可視化に関する試み アンケート調査では「日常の移動や活動についてあなたが日頃感じていることなどについて、ご自由にお書きください。」という質問をしている。ここで回答された文章を対象に障がい者の移動やアクセシビリティ向上に寄与すると考えられる交通行動・移動行動の潜在的意識の可視化を試みる。

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