障がい者の移動に関する研究
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40 ⑤同行状況からみた障がいをもつ本人および介助者が認識する交通行動上の課題 障がいをもつ本人の交通行動上の課題についてここでは、歩行環境、自動車環境、公共交通環境の3視点から整理する。ヒアリング調査ではこれら3視点からの課題を被験者に自由に意見いただいた。そのため、被験者間での問題の認知程度等によって、回答数にばらつきが出ている。 分析の視点として、まず、その課題が本人の能力からみた行動時の課題なのか、もしくは本人の能力等を踏まえた保護者対応時の問題なのかという課題を捉える目線の視点から整理する。次に、その課題が、障がい者に対する人の応対に関する課題なのか、もしくは道路や駅、車両などの交通空間上の課題なのか、もしくは公共交通の料金体系など交通システム上の課題なのかいった視点から整理する。 表3-13は交通空間別の課題指摘数を示している。全体的に歩行環境、公共交通環境に比べて、自動車環境の課題の指摘数が少ないことがわかる。同行の多少による差があるかをみるため、マンホイットニーのU検定をおこなったところ、歩行環境の課題において10%水準で有意差があった。当該環境に対する課題意識の多さは特に同行の多少に大きな影響を与えるものと推察できる。 表3-13 交通空間別の平均課題指摘数 全指摘数 歩行環境の課題 自動車環境の課題 公共交通環境の課題 同行多(n=5) 8.0 3.4 1.0 3.6 同行少(n=4) 8.3 4.3 0.5 3.5 P値 0.90 0.06* 0.79 0.80 ※マンホイットニーのU検定:*:10%有意 表3-14は本人および介助者といった課題を捉える目線の視点から整理した課題指摘数を示している。同行の多少による差があるかをみるため、マンホイットニーのU検定をおこなったところ、有意差があるとはいえなかった。他方、同行が多い群は本人の能力からみた行動時の課題、本人の能力等を踏まえた介助者対応時の問題の指摘数に差がみられない一方で、同行が少ない群では、本人の能力からみた行動時の課題の指摘数が多い傾向がみられる。 表3-14 課題の内容別平均指摘数(能力面) 本人の能力からみた行動時の課題 本人の能力等を踏まえた介助者対応時の問題 同行多 3.6 3.4 同行少 5.0 1.8 P値 0.21 0.31 ※マンホイットニーのU検定 有意差なし

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